ロートレックと現代美術家の協働で浮き彫りになる
「不在」とその表裏となる「存在」
長期休館していた三菱一号館美術館の再開館を機に、コレクションの核となるアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864〜1901年)の作品を改めて展示するとともに、現代アーティスト、ソフィ・カル(1953年〜)を招聘し協働することで、同館の活動に新たな視点を取り込んだ展覧会。
ソフィ・カルが提案した「不在」という主題を通し、生涯にわたって人間を凝視し、その心理にまで踏み込んで、「存在」それ自体に迫る作品を描き続けたロートレックの作品を、「不在」とその表裏の関係にある「存在」という視点から、見直す。
1891年に初めててがけたポスター《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》で成功を収めたロートレックは、多彩な版画作品や油彩画なども数多く残しているが、ポスター画家としての評価のみが先行し、フランスの国公立美術館はロートレックの没後も彼の油彩作品を受け入れなかった。
本展の『Ⅰ ロートレックをめぐる「存在」と「不在」』の章では、ロートレックの生前から彼の作品にいち早く注目したピカソをはじめ、ロートレックの「不在」の間も作品を守り続けた、友人で画商でもあったモーリス・ジョワイヤンとともに、画家によって「存在」を記録されたモデルや友人たちに注目する。
そのほか、モーリス・ジョワイヤン・コレクションに多く残される、色彩が「不在」の単色刷りのポスターが、本来色版が重ねられると存在感が薄くなっていくものであるにもかかわらず、表現力豊かなロートレックの描線の「存在」を引き立たせるなど、本展では、あらゆる「不在」と「存在」にフォーカスした構成となっている。
また、長年にわたり「喪失」や「不在」についての考察を行っているソフィ・カルは、創作活動の根底にある「不在」をテーマにした作品を紹介。テキストと写真を融合した手法で構成された代表的なシリーズや、さらに《フランク・ゲーリーへのオマージュ》、映像作品《海を見る》など、ソフィ・カルの多様な創作活動を観ることができ、はじめてその作品を観る人にも深い印象と気づきをもたらすだろう。
世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、開館10周年記念展「1894 Visions ルドン、ロートレック」で予定されていた、現代アーティスト、ソフィ・カルとの協働プロジェクトがついに実現する、再開館にふさわしい展覧会に足を運んでみてはいかがだろうか。
展覧会名 | 再開館記念「不在」 ―トゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル |
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会期 | 2024年11月23日(土)〜2025年1月26日(日) |
休館日 | 月曜日(11月25日、12月30日、1月13日・20日は開館)、12月31日(火)、1月1日(水) |
時間 | 10:00〜18:00(祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 三菱一号館美術館 千代田区丸の内2-6-2 >> 会場の紹介記事はこちら |
入場料 | 一般 2,300円、大学生 1,300円、高校生 1,000円、中学生以下無料 ※詳細はこちらをご確認ください |
公式サイト | https://mimt.jp/ex/LS2024/ |
問合せ | 050-5541-8600 (ハローダイヤル) |
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