生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った

アプリケや手芸の枠には収まりきらない
身近なモノから生まれた豊かな芸術

  • 2025/01/09
  • イベント
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身近なモノを対象に、布と紙で美しく親しみやすい作品を生み出した、宮脇綾子(1905〜1995年)の展覧会が開催。

アプリケ、コラージュ、手芸などに分類されてきた宮脇の作品だが、いずれの枠にも収まりきらない豊かな世界をつくり上げている。
 主婦として毎日目にしていた野菜や魚などをモティーフとし、それらを徹底的に観察し、時に割って断面をさらし、分解して構造を確かめる。たゆまぬ研究の果てに生み出された作品は、造形的に優れているだけでなく、高いデザイン性と繊細な色彩感覚に支えられ、いのちの輝きを見事に表現しているのだ。

本展では、宮脇をひとりの優れた造形作家として捉え、約150点の作品と資料を造形的な特徴に基づき8章に分けた構成とし、美術史のことばを使って分析することで、宮脇綾子の芸術に新たな光を当てる。

見ることを大切にしていた宮脇の制作は、まずモノを徹底的に観察するところから始まる。布を縫い付けるという、描くよりも不自由な方法をとりながら、優れた写実性を有する宮脇の作品を「観察と写実」の章で観ることができる。

「模様を活かす」では、あらゆる柄や模様が使われ、巧みに組み合わせてつくられた写実的な作品を紹介。宮脇マジックと呼びたくなるような表現が楽しめる。

「線の効用」では、対象を面の集まりとして全体を構成していく宮脇の作品が、紐や糸による線を加えることによって、大きな表現の幅をもつことになった様を観ることができる。
 その他、「断面と展開」、「多様性」、「素材を活かす」、「模様で遊ぶ」、「デザインへの志向」の各章で、宮脇の豊かな発想や表現の面白さに感嘆し、楽しむことができるだろう。

宮脇には3つのこだわりがあり、彼女の作品をひも解くキーワードにもなる。
 一つは「断面」。2つに割った食材の断面に宿る美しさを知っているのみでなく、構造を知りたいという宮脇の探求心が作品に写実性を与えている。
 二つ目は「模様」。膨大な布を収集した宮脇は、布の素材と同時に柄や模様にも魅了されていた。ただの縞柄が筍の皮に変身したり、オコゼの背中で龍が跳ねるなど、模様を活かし、模様で遊ぶ方法をよく知っていた宮脇の作品を、会場で近づいたり離れたりしながら観てみたい。
 三つ目は「発芽」。生命力を感じさせる芽や根は宮脇の重要なテーマだった。「線の効用」で可能になった透明なガラスの器の表現が、彼女の作品に大きな影響を与えた。

40歳になってから創作活動を始めた宮脇の、圧倒的な観察力と探求心から生まれた作品を、見て、驚いて、楽しんでみたい。

  1. 《日野菜》1970年、豊田市美術館
    《日野菜》
    1970年、豊田市美術館
  2. 《さしみを取ったあとのかれい》1970年、豊田市美術館
    《さしみを取ったあとのかれい》
    1970年、豊田市美術館
  3. 《切った玉ねぎ》1965年、豊田市美術館
    《切った玉ねぎ》
    1965年、豊田市美術館
  4. 《白菜》1975年、豊田市美術館
    《白菜》
    1975年、豊田市美術館
  5. 《鮭の切り身とくわい》1980年、個人蔵
    《鮭の切り身とくわい》
    1980年、個人蔵
  6. 《ガラス瓶の中のつる草》1986年、個人蔵
    《ガラス瓶の中のつる草》
    1986年、個人蔵
  7. 《芽の出たさつまいも》1987年、豊田市美術館
    《芽の出たさつまいも》
    1987年、豊田市美術館

開催概要

展覧会名 生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った
会期 2025年1月25日(土)〜3月16日(日)
休館日 月曜日(ただし2月24日、3月10日は開館)、2月25日(火)
時間 10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
会場 東京ステーションギャラリー
千代田区丸の内1-9-1
入館料 一般 1,300円、高大生 1,100円、中学生以下無料
※詳細はこちらをご確認ください
公式サイト https://www.ejrcf.or.jp/gallery/
問合せ 03-3212-2485

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