彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術

国際的なアートシーンで注目を集める
複数のアボリジナル女性作家に光をあてた、日本初の展覧会

  • 2025/06/12
  • イベント
  • アート

近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。
 アボリジナル女性作家は、今日のオーストラリアのアートシーンを牽引し、国際的な現代美術の舞台でも存在感を高めているが、現代アボリジナル・アートが興隆した1970〜80年代は、女性は作家として認められず、制作の中心は男性であった。

彼女たちはいかにしてその立場を逆転し、後のアボリジナル・アートそしてオーストラリア現代美術の方向性を握るようになったのか。
本展は世代と地域を越えた7名と1組の作家の作品を通し、アボリジナル女性作家にフォーカスすることで見えてくる、オーストラリア現代美術の現在地を読み解く、日本初の展覧会となる。

現代アボリジナル・アートの特徴のひとつに、制作手法や作品のテーマ、そして用いられる素材の多様性が挙げられるが、その豊かな表現力の広がりに、女性作家が大きく貢献している。
 バティック、ジュエリー、編み物、ドリーミング(アボリジニが持つ世界観、信仰、文化、そして生活のすべてを包含する概念)を含まない事象的な主題など、それまで芸術作品として受け容れられていなかった創作を、彼女たちは芸術表現に昇華させた。
 また、出品作家の中には、社会問題、環境問題、過去の歴史、失われた文化の復興など幅広いテーマを扱い、脱植民地化の言説が進むオーストラリアで、女性作家たちはアートを通して積極的にその実践を試みている。

アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来しており、本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつとなる。
 伝統文化が深く根付くコミュニティ出身作家からは、80歳を超えた2005年から絵画制作を開始し、約2,000点に及ぶ作品を制作した、マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ(1924年頃〜2015年)や、2008年に日本で回顧展が開催され、最も成功したアボリジナル作家のひとり、エミリー・カーマ・イングワリィ(1910年頃〜1996年)などの作品が出品される。

また、現在のアボリジナル人口の8割が住む都市部出身や、都市部を拠点に活躍する作家からは、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に、創作をとおして積極的に携わっている、マリィ・クラーク(1961年〜)や、吹きガラスを用いたインスタレーションを得意とし、祖先が経験した植民地時代の出来事や、冷戦期の核実験の場として利用された故郷の大地の姿を伝える、イワニ・スケース(1973年〜)の作品などを紹介する。

  1. イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
    イワニ・スケース
    《えぐられた大地》
    2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館
    © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
  2. マリィ・クラーク《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー) Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne. Photo; courtesy Andrew Curtis © Maree Clarke
    マリィ・クラーク
    《私を見つけましたね:目に見えないものが見える時》(部分)
    2023年、顕微鏡写真・アセテート、作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー)
    Installation view of Between Waves, Australian Centre for Contemporary Art, Melbourne.
    Photo; courtesy Andrew Curtis
    © Maree Clarke
  3. ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
    ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ
    《タンギ(ロバ)》
    2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPY ウィメンズ・カウンシル
    © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
  4. ジュリー・ゴフ《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ © Julie Gough
    ジュリー・ゴフ
    《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》
    2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ
    © Julie Gough
  5. ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ》2018年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
    ノンギルンガ・マラウィリ
    《バラジャラ》
    2018年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・樹皮、ケリー・ストークス・コレクション
    © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
  6. ジュディ・ワトソン《記憶の深淵》2023年、天然藍、鉛筆、合成ポリマー絵具・麻布、作家蔵(ミラニ・ギャラリー)© Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.
    ジュディ・ワトソン
    《記憶の深淵》
    2023年、天然藍、鉛筆、合成ポリマー絵具・麻布、作家蔵(ミラニ・ギャラリー)
    © Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia.
    Photography by Carl Warner.

開催概要

展覧会名 彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術
会期 2025年6月24日(火)〜9月21日(日)
休館日 月曜日(7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
時間 10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
会場 アーティゾン美術館 6・5階展示室
中央区京橋1-7-2
>> 会場の紹介記事はこちら
入館料 【ウェブ予約チケット】1,800円
【窓口販売チケット】2,000円
※高大専門生無料(要ウェブ予約)、中学生以下無料(予約不要)
※日時指定予約制
※予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットを販売
※上記料金で同時開催の展覧会を全て観覧可
※詳細は公式サイトのチケット情報をご覧ください
公式サイト https://www.artizon.museum/
問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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