強烈な書で知られる世界的な書家・井上有一とグラフィックデザインとの関係を掘り下げる展覧会
脈動する毛筆、炸裂する墨液…。強烈な作品の数々で知られる井上有一(1916〜1985年)の没後40年を記念した展覧会。
海外で高く評価されるきっかけとなった初期の代表作から、井上の名を広く知らしめたグラフィックデザインとのコラボレーション作品まで一同に会し、井上の足跡をたどる。
1916年に東京市下谷区に生まれた井上は、青山師範学校(後の東京学芸大学)を卒業後、東京・横川尋常小学校に奉職して以降、生涯を教師生活と書に捧げ、精いっぱいの日常を生きる庶民の立場から、自身の芸術をつくりあげようとした。
1945年の東京大空襲で、一時仮死状態になるも奇跡的に息を吹き返すという壮絶な経験を経た井上の「戦後」は、戦争を辛くも生き延びた一人の人間の道行きであり、この特異な書業と来歴に鋭く反応したのが、グラフィックデザイナー達だった。
井上有一の書とグラフィックデザインの連携はいかにして成立したのか、この連携が目指すものはいったい何だったのか。本展で井上の書とデザインの関係を掘り下げることで、「戦後」という時代がどのように移り変わり、現在に至るのかを振り返る、確かな手がかりとなる。
「第一章 そこで生きている書 1940年代〜1950年代」では、井上が活動を始めた1950年代の美術界で伝統美術の革新運動が巻き起こり、この潮流に乗って井上が注目を集めた頃のあゆみを、第4回サンパウロ・ビエンナーレに出品され高い評価を受けた《愚徹》(1956年)など、初期を代表する作品を通して概観する。
1960年代の井上作品にみられたのが、「凍墨」と呼ばれる独自の墨の活用であった。この技法は、冷やして
続く「第三章 複製技術としての書 1970〜1980年代」では、素朴で人々の生活に寄り添った井上の書が、グラフィックデザインによって一気に大衆化する一方で、伝説化してゆく井上有一の評価の展開を、数多くの作品やポスターとともに追いかける。
また、本展で見逃せない作品の一つが「特集 戦争と井上有一」で特別展示される《噫(ああ)横川国民学校》(1978年)だ。
井上有一の創作の原点として極めて重要な出来事となった東京大空襲では、横川国民学校だけでも千人以上が亡くなったが、その中には井上が卒業式のため疎開先から連れ帰ってきた、6年生の生徒8人も含まれていた。
翌朝、おびただしい死体の中から仮死状態で発見された井上は、その後、書の前衛的表現を追究し続け、33年後の昭和53(1978)年に《噫横川国民学校》を制作した。
凄惨な体験から生まれた、魂の叫びともとらえられるこの作品は、見るものの心を揺さぶる。
そのほか、「序章 『花の書帖』とその周辺」では、1971年に出版された井上の初の作品集『花の書帖』を取り上げ、井上有一とグラフィックデザイナーとのコラボレーションの幕開けを、「終章 遠い記憶−夢幻記」では、死期を悟った井上が、自らの記憶を掘り起こし留め置くように幼少期の思い出が描きこまれた作品、《夢幻記》(1979年)を、それぞれ見ることができる。
本展チケットを抽選で5組10名様にプレゼントいたします。ご希望の方は下記の応募フォームにご入力いただき送信ください。
なお、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
締切:2025年8月27日(水)
展覧会名 | 井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s |
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会期 |
2025年9月6日(土)〜11月3日(月・祝) ※会期中、展示替えあり 前期:9月6日(土)〜10月5日(日) 後期:10月7日(水)〜11月3日(月・祝) |
休館日 | 月曜日(ただし9月15日、10月13日、11月3日は開館)、9月16日(火)・24日(水)、10月14日(火) |
時間 | 10:00〜18:00(金曜日は20:00まで) ※入場は閉館時間の30分前まで |
会場 | 渋谷区立松濤美術館 渋谷区松濤2-14-14 |
観覧料 | 一般 1,000円、大学生 800円、高校生・60歳以上 500円、小中生 100円 ※土・日曜日、祝休日は小中生無料 ※毎週金曜日は渋谷区民無料 ※障がい者及び付添の方1名は無料 |
公式サイト | https://shoto-museum.jp/ |
問合せ | 03-3465-9421 |
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