時代背景や隠された物語に潜む恐怖。見るだけでは伝わらない怖さを追求
“恐怖”に焦点を当て、その絵の時代背景や隠された物語を踏まえて絵を読み解く美術書『怖い絵』。作家・ドイツ文学者の中野京子が2007年に出版し、ベストセラーとなりました。同書に取り上げられた絵を中心に、中野氏が特別監修した“恐怖”がテーマの近世・近代の油彩、版画など、約80点が集う企画展です。
一般的には、絵画と向き合った時に色彩、タッチ、雰囲気、表現方法など、心のままに感じるものが絵画鑑賞と認知されています。『怖い絵』では、その時代ごとの文化や歴史、描いた作家の思惑などを予備知識として学んでから作品と向き合うことで、表層を見た時とは異なる魅力や、怖くない絵が急に恐ろしく感じるといったインパクトを享受できると示唆し、多くの反響を呼びました。
刊行10周年を記念して開催される本展では、恐怖をテーマにした絵画を6つの切り口で紹介します。「1章 神話と聖書」では、神の意志や気まぐれに翻弄される人間の悲喜劇を描いたもの。「2章 悪魔、地獄、怪物」では、想像力豊かに育まれた悪魔や地獄のイメージ、怪物の主題を取り上げます。「3章 異界と幻視」では、別空間としての異界、日常の狭間や人の内面の幻視を表現。「4章 現実」では、死を筆頭に社会的な習俗の悪弊や不条理を描いたもの。「5章 崇高の風景」では、感情を暗示させた風景画を取り上げて読み解きます。「6章 歴史」では、悲劇的エピソードや運命に翻弄された人々の姿を描いた作品が集います。
最大の見どころは、縦2.5m、幅3mに及ぶ、ポール・ドラローシュ《レディ・ジェーン・グレイの処刑》。「9日間の女王」として知られ、16歳で散った若きの元女王の最期を、繊細な筆致で描いたロンドン・ナショナル・ギャラリーの代表作品です。ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー《オデュッセウスとセイレーン》、ウィリアム・ホガース『ビール街とジン横丁』より《ジン横丁》などに加え、ターナー、モロー、セザンヌといった巨匠による作品も登場します。
展覧会名 | 「怖い絵」展 |
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会期 | 2017年10月7日(土) 〜 12月17日(日) |
休館日 | 会期中無休 |
時間 | 10:00〜17:00 ※入場は閉場時間の30分前まで |
会場 | 上野の森美術館 台東区上野公園1-2 |
入館料 | 一般 1,600円、高・大生 1,200円、小中生 600円 |
公式サイト | https://www.ueno-mori.org/ |
問合せ | 03-5777-8600 (ハローダイヤル) |
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