草間彌生の心の中を映し出す豊かな創作表現を体感
幼時の幻覚や心に湧き上がるヴィジョンなど、きわめて個人的な体験を創作の源泉としている草間彌生。本展では、草間の内面から湧き上がるイメージや想像力に着目し、創作を始めた頃から現在に至るまでの多様な作品を紹介する。
初期の大作《残夢》は、現存する数少ない草間の日本画作品だ。幻想的な風景には、家族との諍いが絶えなかったという当時の草間の不穏な心模様が表れているとされており、本展では立体作品《赤い地平線》と併せて展示され、赤く彩色された無数の軍手が広がる光景は、草間の想像力のように圧倒的な存在感を放つ。
1950年代前半の創作活動は、水彩のほか、グワッシュ、パステル、インク、鉛筆などを用いたドローイング作品の制作に集中しており、展覧会評などの資料が、記録写真と併せてデジタル展示でされる。
ニューヨークを拠点としていた60年代には、縫製布で突起物を形作ったソフト・スカルプチュア(柔らかい彫刻)と呼ばれる立体作品の制作を開始した。これは、草間の性に対する強迫観念を作品化したものとされており、草間の代表的なモチーフとして継続的に制作されているが、90年代頃になると、植物や原生生物などを思わせる大型作品への展開が見られるのも興味深い。
日本に帰国した70年代以降から90年代ごろまでに集中的に制作されたコラージュ作品は、写真の切り抜きで形作った水玉や、描画で表現された網目模様など、草間作品の代表的なモチーフが描かれており、こちらも草間の作品世界を彩る重要な要素の一つとなっている。
2009年から現在まで続くアクリル絵画の連作「わが永遠の魂」は、草間の心の中に湧き上がるアイディアを即興的に描き出しているもので、作家自身の内面から生み出された創造物であり、不思議な感覚をもたらしてくれる。
2000年代以降は、部屋全体を用いたインスタレーション作品の制作に積極的に取り組んでいる。その一つである《I’m Here, but Nothing》では、草間が「自己消滅」と呼ぶ、自他の境目がなくなるような感覚を体感できる。
初期から現在に至るまで、現実と内面が連続した草間独自の超現実的な世界観を堪能したい。
※会期終了に伴い画像を削除いたしました展覧会名 | 心の中の詩 |
---|---|
会期 | 2022年3月3日(木)〜8月28日(日) |
休館日 | 月・火・水曜日(祝日を除く) |
時間 | 11:00〜17:30 |
会場 | 草間彌生美術館 新宿区弁天町107 |
観覧料 | 一般 1,100円、小中高生 600円 ※日時指定の事前予約・定員制 ※チケットは美術館公式サイトのみで販売。窓口での取り扱いなし ※詳細は公式サイトをご確認ください |
公式サイト | https://yayoikusamamuseum.jp/ |
問合せ | info@yayoikusamamuseum.jp |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。