地域も時代も異なる二人の画家 苦難の中から生み出された癒しの絵画展
ヨーロッパと日本、20世紀前半と後半、それぞれ活躍した地域も時代も異なりつつも、共に牧歌的で楽園のような風景を、自然への愛情を込めて描き出した、アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)。本展では、両者の作品を、代表作を含む計116点で紹介する。
1873年にフランス中部のシャトー=ルノーで生まれたアンドレ・ボーシャンは、アンリ・ルソー以来の最も優れた素朴派の画家ともいわれている。芸術とは無縁の環境で育ち、苗木職人として農園を営んでいたボーシャンは、41歳の時に第一次世界大戦へ徴兵され、46歳で除隊。農園の破産と、その心労から精神に異常をきたした妻の世話をしながら、半ば自給自足の生活をおくり、そのかたわら戦時中に習得した測地術をきっかけに絵に興味を持つようになった。
ボーシャンが描いたのは、なじみのある故郷の風景や、苗木職人として身近に接していた植物の生き生きとした姿だ。また、神話や歴史の登場人物など、小さい頃からボーシャンが親しんでいた世界も描き込まれている。深い愛情を感じさせる豊かな自然描写と、素朴でぎこちない人物表現の取り合わせには、そこはかとない味わいがある。
一方、1928年に京都で生まれた藤田龍児は、20代の頃から画家として活動するも、48歳のときに脳血栓を発症、翌年の再発で右半身不随となってしまう。利き腕が動かなくなり画家の道を一旦あきらめるも、懸命なリハビリにより絵筆を左手に持ち替えることで、画家として再スタートを切った。
初期の抽象性の強い幻想的な作品とは変わり、大病後には親しみやすいのどかな風景を描くようになった藤田。広い草原やのんびりした田舎町など、記憶にある光景をもとに作り出された藤田の心象風景ともいえるこれらの作品群は、私たちの遠い記憶を呼び覚ますように感じられる。
ともに苦境の中で理想郷を夢想し、心を癒すような牧歌的な作品群を生み出したボーシャンと藤田。人と自然が調和して暮らす世界への憧憬に満ちた両者の作品は、色や形を愛で、描かれた世界に浸るという、絵を見ることの喜びを思い起こさせる機会となるだろう。
展覧会名 | 牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児 |
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会期 | 2022年4月16日(土)〜7月10日(日) ※会期中、展示替えあり 前期:4月16日(土)〜5月29日(日) 後期:5月31日(火)〜7月10日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし5月2日、7月4日は開館) |
時間 | 10:00〜18:00 ※金曜日は20:00まで ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京ステーションギャラリー 千代田区丸の内1-9-1 |
入館料 | 一般 1,300円、高大生 1,100円、中学生以下無料 |
公式サイト | www.ejrcf.or.jp/gallery |
問合せ | 03-3212-2485 |
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