アンチノミーから生み出される儚げで美しい物語 ニール・ホッド、日本初の個展

KOTARO NUKAGA(六本木6-6-9 ピラミデ2F)

  • 2022/7/22(金)
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アンチノミーから生み出される儚げで美しい物語 ニール・ホッド、日本初の個展

 イスラエル出身でニューヨークを拠点に活動するアーティスト、ニール・ホッド(Nir Hod, 1970年)による日本初の個展「Echo of Memories」が開催中。

 本展は、ホッドの代表作であるクローム絵画のシリーズThe Life We Left Behindからの新作と、ファウンドフォトをベースに新たなイメージとして作り上げられたモノクローム絵画の新作によって構成される。
 抽象画を描くかの様に、黒やグレー、青、緑、そしてクロームを塗布されたキャンバスは、さらにホッド自身の思い描いたナラティブを実現させるためにアンモニア、ガソリン、酸といった化合物が加えられ、その化学反応によって色彩層が劣化させられる。最終的に色彩は部分的に剥がされ、この破壊的行為の中からホッドはクロームの光の輝きをすくい上げる。このようにして作り出されたクローム絵画は、その鏡面性をもった表面特性から、環境や鑑賞者を絵画の世界に取り込みながら、揺らぎ変化をつづけ、終わりのない反響の中に思考を連れ込む。クローム絵画を前に鑑賞者は不確かな自身の姿を儚くも美しいナラティブの登場人物に置き換えることができるのだ。
 また、どこか古い写真のもろさを感じさせるモノクロームの絵画には、ファウンドフォト(撮影者不明の写真)によって見つけられた、死や破壊、醜さ、悲しみといった世界に溢れるタブーとされるようなイメージを元に描かれている。ホッドはそこに創造や美しさ、喜びという(二律背反する)アンチノミーな概念を同居させることで、イメージは清濁併せ持った状態となっている。

 本展においてホッドは、記憶、光と反射、喪失とトラウマ、破壊と再生、そしてそれらが生み出す人の想像力といった概念へのあくなき探求を、絵画というオブジェクトワークの枠を超えて示している。
 展示されているすべての作品のスチール撮影が可能(ただしフラッシュ撮影は不可)となっている。ぜひ、作品に映り込む自身の姿を捉えながら、ホッドが生み出す美の物語を体感してほしい。

【会期】7月9日(土)〜8月27日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00

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