シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)
およそ40年間にわたり「わたし」という一貫したテーマを持ち、さまざまな題材で「なにものかに扮するセルフポートレイト写真」を発表し続けている森村泰昌(1951年〜)。
本展では、最新作、未発表作、および近作が相互に関係性を持たない五つのセクション(=五重人格)を構成し、各種各様に自在な展開をみせる。
登場するのは、森村が扮する「甲斐庄楠音」、「ナポレオン」、「ミロの絵画」、「カフカ」、「魯迅」。絵画のように見える作品もあるが、いずれも入念なリサーチのもとに創られた写真作品である。
「ナポレオン」に扮した《交響曲絵画「EROICA No.6」》(写真左)は、顔と上半身は森村自身、下半身部分はマネキン、白馬は実際に森村が京都競馬場で撮影したもの、背景は自身が制作したジオラマを撮影したもの。コラージュとは思えないほどの一体感のなか、違和感のないナポレオン像が創り上げられている。
一方、成人期と幼少期の「カフカ」に扮した作品は、コラージュなどの加工はなく、現実の世界で創られている。服の中に詰め物をして子どもの等身を再現したという作品は、まさに少年カフカのような雰囲気を纏う。
あたかも多種多様な人格が「森村泰昌」という一つの器の中に同居しているかのように見える。森村はそのような「統一感が欠如していること、整理されず散乱していること、異なるキャラクターや価値観が混在していること、ヒエラルキーを生み出さないこと」をむしろ肯定し、「お定まりのアイデンティティに収斂されること」を回避したいと述べている。
計14点の出品作が奏でる不協和音とともに、「森村泰昌」の多重人格性が、静かにそして楽しく炸裂する贅沢な空間だ。
【会期】4月19日(金)〜6月1日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00
【画像】「森村泰昌 楽しい五重人格」シュウゴアーツ, 2024 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts
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