六本木ヒルズ A/Dギャラリー
「愛らしさと不気味さ、生と死という言語的に相反する要素の調和」をテーマに制作を行う江口綾音の個展が開催中。2018〜2024年に制作された新旧の作品が楽しめる。
砂糖菓子のように色彩鮮やかな江口の作品には、クマのぬいぐるみのような可愛いらしい生き物やカラフルなキノコなど幻想的な世界が広がる一方、その細部には「血肉」が描かれるなど、私たちの生きる矛盾の多い世界と同じであると気づかされる。
「日々制作を続けることが私の舞台であるなら、旧作から新作までを静かな白い壁に展示することは幕間(まくあい)のよう」という江口の想いが込められた「まくあい」というタイトル。今回の新作では波に兎のモチーフが使われた作品が数点ある。「人生になぞらえた波に兎を描くことで繁栄と飛躍を表す吉祥文様となります。『人生には荒波も凪の期間もあるけれど、波に抗わず長く海原に漂っていればラッキーな時もある』と思いながら描きました。」と江口氏。
メインビジュアルでもある「海の記憶」は、先に六本木ヒルズの屋上から見た夜景を反転させて描き、上にかつてその一部が海だった頃の東京の姿を重ねている。透明感のある油彩を使うことで下の絵が透けて見え、絵に奥行きが生まれる。遠くから見て幻想的な全体像を、近づいて見て浮かび上がってくる姿を何度も見比べたくなる作品だ。
会場で江口の作品がもつ絵肌や躍動感、艶やかさなど、さまざまな表現が行きかう波に身をゆだねてみたい。
【会期】7月5日(金)〜7月21日(日)※会期中無休
【時間】12:00〜20:00
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