國分莉佐子個展「天穹のスパークル」ハイファイ・メモリーズ2 DLC

Gallery & Restaurant 舞台裏(麻布台ヒルズガーデンプラザA B1)

  • 2025/3/26(水)
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國分莉佐子個展「天穹のスパークル」ハイファイ・メモリーズ2 DLC

 東京を拠点とするアーティスト・國分莉佐子の個展が開催中。
國分は、幼少期に遊んだ平成のビデオゲームから着想を得て、現実世界とゲームの中の世界が重なり合うようなイメージを作り出している。

 本展は、2025年1月に東京藝術大学で行われた修了展示「ハイファイ・メモリーズ2」のDLC(ダウンロード・コンテンツ)展示となり、「タッチパネルの身体性」というテーマをもとに、絵画や映像を展開している。

 『DLC展示とは、どのようなものだろうか』と思いつつ会場に入ると、正面に藝大の修了展示作品が飾られており、その大きさと色鮮やかさに圧倒される。左手には映像作品が、そして会場の両側にも絵画作品が展示されている。
ネットワーク経由で配信され、ダウンロードするとゲームで新たな要素が加わるDLCように、本展タイトルにある「DLC」には、修了展示からさらに先の世界が広がっていく意味も込められている。

 植物や水面などの有機的な存在と、ゲームのタッチパネルやプレイ画面を思わせる描写が同居する國分の絵は、抽象的にも具象的にも見え、不思議な世界観を成している。國分がこれまでに見た景色などをモチーフとしているが、これは彼女が現実で見たものと、ゲームの中で見た景色の二つの世界が描かれている。
 國分は三歳頃から、外で日光を浴びながら遊ぶのと同じぐらいに家の中でゲームをプレイし、外の世界と同様にゲームの中の世界を知覚していた。人工的な光に満ちた画面の向こうの世界と、外の日光が降り注ぐリアルな世界が対をなすように、彼女にとっての現実として双方が存在していたのだ。

 色彩あふれるモダンな絵のように見えるが、よく見ると本当に細かい部分まで描かれており、きらきらと反射した水面の表現や、光と影のコントラストなど、ここまでこだわって描くのかと驚かされる。
特にこだわりがあるのが、あらゆる光や色を表すグラデーションで、納得のいく表現ができるまで、何層も筆を重ねぼかし続けるそうだ。

 また、絵を描くのと同様に「描かれている」のがデジタル作品だ。CGで作られているが、光や色のデリケートな表現は絵画と変わらない。
物理的な条件が異なるものの、キャンバスに描いて表現していたものを、デジタルのツールを使ってモニター越しに表現する。のぞく窓が違うだけで、コンセプトや伝えたいことは同じなのだ。
 本展で観ることができる映像作品では、國分が「OPTGRAM」と呼び絵画でもよく描いている、ぐるぐる線が画面の中で動いている。これは目線の動きやタッチパネルの指紋の跡、光の軌跡のあと、ものを認知するときに必要な光の波形などを抽象的に表したものだ。絵画では動かなかったモチーフが動くようになったことに注目しながら観るのも面白い。

 絵は画家が筆を置いたところで完結するが、映像作品はまさにDLCのように新しい要素が加わったり、完成後でも先の世界が広がっていくだろう。
 「絵は展示場所まで観る人に足を運んでもらうことになるが、映像ならデータを転送すれば、世界中どこでも観ることができる」と、新しい可能性を感じているという國分は、3月に油画にて藝大修士課程を卒業した後、4月からは同大学院映像研究科メディア映像・修士課程にてダブルマスターの取得をめざすという。

 在学時から個展を開いたり、本展の作品を「観たことある絵だ!」とギャラリーに入ってくる人もいたり、という國分の作品を、すでに追い続けている人が多いと聞く。
高い技術、あくなき探求心、独自の世界観など、どれをとっても今から追っておきたい注目のアーティストだ。

【会期】3月19日(水)〜4月22日(火)
【定休日】月曜 ※祝日の場合は翌平日が休業日
【時間】ギャラリー:11:00〜20:00 レストラン:平日13:00〜22:00、土曜 13:00〜20:00、日曜 13:00〜18:00

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