六本木ヒルズ A/Dギャラリー

不安定な時代における「命の尊さ」をテーマに制作を続けるアーティスト、手島領の個展が開催中。
コロナ禍以降、手島が一貫して描き続けている「BABYBOY™」は、厄災の中で「子どもたちが傷つかない未来を願う」シンボルとして生まれたキャラクターだ。
本来守られるべき存在である赤ちゃんが、次世代の命を守るために立ち上がり武器を手に取り戦う姿は、命の尊さや未来への希望の象徴でもある反面、戦禍やパンデミックなど現代社会の問題を浮き彫りにする。
手島は去年、突然の病で長期入院を余儀なくされ、死は思ったより身近にあると感じた。その経験を通してつけた本展のタイトル「BABYBOY™ - NEO(n) YEAR」(新しい年)は、単に新しい年を祝うだけではない意味も込められている。
「(n)には“数”という意味を込めていて、何回か繰り返すことを表しています。去年病気で死にかけた後にむかえた前回の個展は、初日が僕の誕生日ということもあり、もう一度生き直し生まれ変わったような気持ちで『NEO(n) BIRTH』とタイトルをつけました。そこから新しい年を迎え、続編となる本展は『NEO(n) YEAR』です。また、生成AIの発展など時代の変わり目というか、いろいろな仕組みや根本的なものが変わる潮目のような年にも感じます」。
そのように『新しい年』を読む手島が本展で取り入れた新しい取り組みは
「手描きの作品を数点発表しています。これまでプリントで仕上げる作品が多かったのですが、ゼロからもう一度始める感じで取り組みました。AIなどの技術が発達するほど、手描きで描くときの曖昧さとか、筆運びなどが大事なのではないか、と思ったのです。一般的には、手描きから始めて、テクノロジー的な技法を取り入れていく人が多いと思いますが、僕の場合は逆にもう一度手描きに戻り、どのようなアプローチができるのか試したいと思いました」。
手島は、Apple Vision Pro(AVP)を装着し、仮想モニターで作品を大きく表示しながらデジタルペイントしてプリントした後、全体に手描きを加えて作品を完成するという、デジタルを活用したスタイルを用いている。そこからアナログともいえる手描きの技法に取り組んだというから面白い。
かわいいポップな色使いについては、
「テーマが重いので色まで暗くならないよう気を付けています。アートを観るときに感じる、フレッシュな気持ちになるような感覚が大事だと思っているので、明るい色使いを意識しています。また、蛍光色はポップである反面攻撃的な色なので、明るいけれど攻撃性のある、BABYBOYの強い気持ちも表現しています」。
今回はじめて取り入れたという花のシリーズは、平和の訪れを告げるオリーブをくわえた鳩の絵に小さく、武器を持ったBABYGIRLが描かれている。また、清浄を表すカラーの花の芯の部分はミサイルになっており、BABYBOYは銃を携えている。
「室内に飾りやすいモチーフとして花を取り入れたかったのですが、BABYBOYにはかわいいだけではなく、戦禍の中で子供たちがどうなるか、という面は残したいと思っておりまして、このように描きました」。
手島が描くBABYBOYたちは、トレードマークのようにおしゃぶりをくわえている。
「赤ちゃんにとっておしゃぶりは、精神安定などの役割がある反面ストレスのもとにもなります。本当は、今回おしゃぶりをくわえていない(解放された)姿も描く予定だったのですよ。でも、最近の社会情勢を考えるとまだまだはずせないな、と思っています」。
BABYBOYたちがおしゃぶりをはずすことができる、平和な世界は来るのだろうか、と考えさせられた。
今後の展望を聞くと、
「15年以上前に構想していたことを形にするプロジェクトを始めています。もしかしたら、それを実現するために僕は甦ったのでは、とも思っています」。
生まれ変わり、無事に新しい年を迎えた手島が今後生み出す新しい取り組みを、これからも楽しみにしたい。
【会期】1月9日(金)〜1月25日(日)※会期中無休
【時間】12:00〜20:00
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