港区界隈の個性派 博物館
伊勢半本店 紅ミュージアム
金と対等の高級品!江戸女性の唇を彩った“紅” 伊勢半本店 紅ミュージアム

1825(文政8)年に創業し、紅花から“紅”を作る紅屋の老舗「伊勢半本店」が、紅の歴史、江戸時代の化粧文化などを後世に伝えるべく開いた「紅ミュージアム」。
 江戸時代の紅屋と生産農家で交わした取引文書や化粧道具など約80点が並ぶ常設展のほか、毎年秋に企画展を開催。講座やイベントなども随時企画されている。

展示は、まず原料の紅花の説明からスタート。山形県最上地方で生産される紅花は7月上旬から2週間だけ咲く。日が昇ると棘が固くて摘み取れないため、まだ柔らかい早朝のうちに摘花。水を打ちながら発酵させ、天日干しして原料である紅餅を作る。「紅一匁(もんめ)金一匁」と金と同等に扱われるほど高価なのも実感できる手間のかけ具合だ。
 紅餅から紅を作る方法は代々口伝で受け継がれ、現在は7代目と2人の職人だけが知る秘伝。製造所は女人禁制で、江戸時代から製法は変わらないそう。出来上がった紅を猪口などに塗って自然乾燥させると、緑の玉虫色に輝く口紅「小町紅」になる。赤が乾くと緑に変わるのが何とも不思議。
 続いて現れたのは、紅を塗る女性の浮世絵。文化文政年間(1804〜1829年)、ひと点し(1回唇にのせる)30文(約600〜700円)の小町紅を、下唇に重ね塗りして緑色にする化粧法“笹紅”が流行。浮世絵の女性の唇も確かに緑色をしている。高価な小町紅を買えない庶民は墨をのせてから紅を重ね、黒光りで玉虫色に近い色合いを出す裏技を編み出したとか。流行を追う女心はいつの時代も変わらないようだ。

江戸時代の化粧道具も並ぶ。白粉(おしろい)を水に溶くのに使った白粉三段重、紅が残る猪口、筆など、生々しさも感じられて印象深い。お歯黒に使った碗や原料の五倍子粉(ふしのこ)、櫛、笄(こうがい)、白髪染めの引き札(広告)などもあり、当時の美容全般が見られる。必見は板紅。携帯用の紅入れで、5cm位の大きさながら漆や象牙、木彫りなど細かな装飾が施されており、工芸品のような美しさだ。
 最後は、通過儀礼や年中行事での紅の役割について。紅は魔除けの意味もあり、赤ん坊をくるむ“おくるみ”、七五三の晴れ着、婚礼衣装の裏地、還暦の赤い羽織など、大切な時に用いられてきた。雛祭りの菱餅のピンクも紅から来ているという。

紅の知識や江戸時代の化粧を学んだ後は、隣接するサロンで小町紅を体験。絵の具のように軽い付け心地は良い意味で衝撃的。本来の唇の色や体温で発色が変わるので自分だけの色合いが楽しめるのも魅力だ。
 伝統ある色を唇にのせ、江戸女性の美意識に浸ってみたい。

    伊勢半本店 紅ミュージアム(南青山)
  • 港区南青山6-6-20 K's 南青山ビル1F [MAP]
  • 03-5467-3735
  • 料金
    常設展/無料
    企画展/有料
  • 10:00〜18:00(最終入館は閉館30分前まで)
  • 休館日
    毎週月曜(祝日の場合、翌火曜)、
    年末年始
  • 銀座線・千代田線・半蔵門線「表参道」駅
    徒歩12分
  • webサイト

2014年12月取材/2015年2月更新