企画展 ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる「生写し」

四季連作屏風のパノラマ空間とヒューマンな動物たちの世界へ、ようこそ

  • 2024/03/19
  • イベント
  • アート

大正中期に大阪茶臼山に建築された住友家本邸を飾った木島櫻谷(1877〜1938年)の「四季連作屏風」を全点公開する企画展が開催。併せて江戸時代中期(18世紀)京都で生まれた円山四条派の代表的な画家たちによる花鳥画表現を紹介することで、櫻谷の「生写し」表現の特質にもライトアップする。

大正期の櫻谷は、独特な色感の絵具を用い、顔料を厚く盛り上げ、筆跡を立体的に残し油彩画のような筆触に挑戦している。そのために“技巧派”などと称されてきたが、櫻谷の真骨頂はそれに収まらない極めて近代的なものだった。

大きな見どころは、櫻谷が描いた四季連作の金地大屏風が全面居並ぶパノラマ空間だ。四双の金屏風は、大正4年頃から2年をかけて制作されたもので、本紙だけでもすべて縦180p・幅720pを越えるサイズは、住友家本邸の書院大座敷にあわせてかなり大振りである。
 琳派が流行した大正期、制作中から「光琳風」との評判もたった本作は確かに、装飾性に富んだ型の反復美が琳派好みの典型を示している。しかし、よく観ると油彩画も研究した絵具の扱いや、写生を生かし景物を大胆に切り取った狩野派的画面構成など、櫻谷の斬新で意欲的な取り組みが盛り込まれていることに気付く。そして、一輪一輪描き分けられ、光を求め風雪にゆらぐ花々は、伸びやかでよどみない櫻谷の運筆によっていっそう輝きを増している。

また、「写生派」先人絵師たちと櫻谷が描いた動物たちの作品にもライトアップする。
 江戸時代中期(18世紀)、自然や事物を生き生きとありのままに描く「生写し」(写生)という方法を編み出した円山応挙(1733〜1795年)。櫻谷も、応挙以来の写生表現に学びながら自らの画風を確立していった。
 本展では、応挙の写生から派生し、京阪画壇を席捲して、近代にも大きな影響を与えた円山四条派の親和的表現に特色がある動物画に焦点をあて、先人画家たちによる動物表現と比較しながら櫻谷の動物画を展観する。

円山四条派の写生を基礎に、古典画題に現代性を与え、さらに突っ込んだ西洋画式の写実をさまざまに試みた櫻谷。その筆を通して人間的な感情も溶かし込んだ動物たちは絵の中で息を吹き返す。生き生きとした豊かな表情が観る者の心に沁みる。
 動物表現に託した櫻谷のヒューマニズムが生んだ作品の数々を堪能できるのも本展の大きな見どころだ。

  1. 木島櫻谷《柳桜図》大正6年(1917)泉屋博古館東京(左隻)
  2. 木島櫻谷《燕子花図》大正6年(1917)泉屋博古館東京(左隻)
  3. 木島櫻谷《獅子虎図屏風》明治37年(1904)個人蔵(右隻)
  4. 円山応挙《双鯉図》江戸・天明2年(1782)泉屋博古館
  5. 木島櫻谷《葡萄栗鼠》大正時代・20世紀 泉屋博古館東京(部分)
  1. 木島櫻谷《柳桜図》大正6年(1917)泉屋博古館東京(左隻)
  2. 木島櫻谷《燕子花図》大正6年(1917)泉屋博古館東京(左隻)
  3. 木島櫻谷《獅子虎図屏風》明治37年(1904)個人蔵(右隻)
  4. 円山応挙《双鯉図》江戸・天明2年(1782)泉屋博古館
  5. 木島櫻谷《葡萄栗鼠》大正時代・20世紀 泉屋博古館東京(部分)

開催概要

展覧会名 企画展 ライトアップ木島櫻谷 ― 四季連作大屏風と沁みる「生写し」
会期 2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
休館日 月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
時間 11:00〜18:00(金曜日は19:00まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
会場 泉屋博古館東京
港区六本木1-5-1
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入館料 一般 1,000円、高大生 600円、中学生以下無料
公式サイト https://sen-oku.or.jp/tokyo/
問合せ 050-5541-8600 (ハローダイヤル)

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