泉屋博古館東京(六本木1-5-1)
日本人が自分たちの風景や心情を、華麗な色彩や繊細な表現で描いたやまと絵は、平安前期に誕生し、時代ごとに慣れ親しんだものを取り入れ変化しながら近代まで描き継がれてきた。
昨年、東博で開催された「やまと絵−受け継がれる王朝の美−」展では中世までの作品が展示されたが、本展では、近世初期(桃山〜江戸時代前期)の作品を中心に住友コレクションのやまと絵が一挙公開されている。
とりわけ、伊勢、源氏、平家の三大物語屏風が揃って同じ展示室で鑑賞できるのが本展の醍醐味だ。担当学芸員・実方葉子氏は「《源氏物語図屏風》では宮廷の優雅なようすなどが描かれているが、詳細を見ると、後に妻となる若紫(紫の上)を興味深々に見つめる光源氏の下世話な表情なども描かれているところが面白い」と解説する。
そのような見どころがキャプションと併せて書かれているほか、ロビーでは、文化財用高精細スキャナーで撮影した拡大画像の展示もあるので注目したい。
この他にも「歌絵」では、紫式部の曽祖父「藤原兼輔」の姿が描かれた作品や、「れきし画」では、神話や繊細な光などが表現された近代の日本画が鑑賞できる。
とにかく作品の色彩や水茎の跡の美しさが印象的だ。実方氏は「当時の画家たちはどのような絵具を使えば後世に残るかを考え、最高級の岩絵具や和紙を使用したことが、美しさの大きな要因ですが、100年ごとに行われる表装の修理などもあわせて、状態よく残っている作品は叡智の結集と言えます。当館は小さいですがその分、一つひとつの作品の詳細をじっくり見て頂けると思います。やまと絵のさまざまな様式や表現を堪能してもらえれば」と話す。
【会期】6月1日(土)〜7月21日(日)
【休館日】月曜日(7月15日は開館)、7月16日(火)
【時間】11:00〜18:00(金は19:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
【画像】展示風景。主催者の許可を得て撮影
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