照屋勇賢 個展「NEVER END」

Gallery & Restaurant 舞台裏(麻布台ヒルズ)

  • 2024/11/22(金)
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照屋勇賢 個展「NEVER END」

 沖縄県出身で現在はベルリンなどを拠点に国際的に活躍するアーティスト、照屋勇賢(1973年〜)の個展が開催中。照屋の作品は、紙袋などの見慣れた素材や日用品を用いながら、その中核には沖縄の歴史や在沖米軍問題への視点、社会における権力匂配や支配のシステムといったテーマが据えられている。

 国内外で個展が開かれる照屋の作品は、ニューヨーク近代美術館、大英博物館、森美術館、沖縄県立美術館など、数多くの美術館で収蔵されており、本展では、《朱の鳥、紅の空》(2010年)と「モノポリー」シリーズを中心に、砲弾の断片と風船を用いた《NEVER END》が展示される。

 会場に入って正面に展示されている《朱の鳥、紅の空》は、沖縄の伝統工芸である紅型の美しさに惹きつけられる。だが、よく見ると描かれているモチーフは米軍の存在を彷彿とさせる有刺鉄線や戦闘機をはじめ、「コザ騒動」を想起させる、上下反転したパトカーなど、沖縄の歴史を物語る。
琉球王国から受け継がれた伝統美と、沖縄がたどってきた怒りや悲しみが共存しているのだ。

 また、このモチーフの型染めに使用された型紙は、私たちの身近にある大量生産品の箱や沖縄土産の菓子箱が使われており、紅型の作品の近くに展示されている。
 私たちが日常目にする、身近な商品の箱を用いて作られた紅型と、その図柄に描かれた、ふだん目を背けがちな沖縄の問題という対比にハッとさせられる。
 照屋の紅型を用いた作品は、2000年代初頭から展開しており、同シリーズの《結い、 you-I》は、現在大英博物館に収蔵されている。

 これらの作品からつながるように展示されているインスタレーション作品《NEVER END》(2024)の、真っ赤な風船の先に括り付けられた鉄の塊は沖縄戦で使用された砲弾の一部で、会場では実際に手に取って、その重さと冷たさを体験することができる。「決して繰り返してはいけない過去」を手で感じつつ、上にまっすぐ向かう風船は、未来へ向かう希望のイメージともとれる。

 そのほか、照屋の代表的なシリーズの一つである「モノポリー」シリーズは、ゲームに使われるおもちゃの「お金」を使い、既存の公共施設を再現する。
本展では、フランスのルーブル美術館を模した《Louvre》(2022)のほか、新作の《Azabudai Hills》#1〜#3が展示されている。

 視覚的な美しさとシニカルな批評性を兼ね備えた照屋の作品を観て、今も続く問題に心を寄せ、考えるきっかけにしてみるのも良いだろう。

【会期】11月16日(土)〜12月29日(日)
【定休日】月曜 ※祝日の場合は翌平日が休業日
【時間】ギャラリー:11:00〜20:00 レストラン:平日13:00〜22:00、土曜 13:00〜20:00、日曜 13:00〜18:00
【写真】照屋勇賢 個展「NEVER END」展示風景/Photo by Jun Yokoyama

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