ヒロ杉山「国宝ブラックペインティング」

六本木ヒルズ A/Dギャラリー

  • 2024/12/24(火)
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ヒロ杉山「国宝ブラックペインティング」

 絵画から映像まで、幅広い創作活動を展開する、ヒロ杉山の個展が開催中。
1997年にクリエイティブユニット「Enlightenment(エンライトメント)」を設立。ファインアートの世界で、国内外の展覧会で作品を発表している。

 杉山氏は「ブラックペインティング」シリーズで、これまでにウォーホルやピカソ、ゴッホやマティスといった作家の作品をシルエット化し、具象と抽象の「間(はざま)」を表現してきた。
 ブラックペインティングシリーズは、既存の絵画作品に描かれたモチーフのアウトラインだけを拾い、内側を黒く塗りつぶしてシルエット化する。絵画に描かれている色などの情報を消すことにより、抽象画に近づけていく。
 4年ほど前から制作の同シリーズでは、黒くシルエット化されたモチーフに、筆のタッチや絵の具の盛り上がりなど、凹凸をつけることで光と影による表情が現れ、一度抽象化された絵が再び具象へと引き戻される。また、観る者は見えないはずの色彩を感じ始めるのだ。

 本展では、「国宝」を新たなテーマとし、2024年10月に京都・東福寺塔頭 光明院で開催した個展で発表した作品のほか、新作13点を加えて展示する。

 「国宝」シリーズは、彫刻を中心に立体作品をシルエットで描いており、ここ数年のブラックペインティングシリーズの特徴でもある、凹凸はない。その違いを杉山氏に訪ねると、
「まず、使っている画材が違います。国宝では、オイルスティックを使って描いています。絵画のシリーズは表面に立体感を与えていますが、こちらは立体作品を描いているので、あえて平面的に表現しています」。

 国宝シリーズで描かれているものは、誰もが一度は実物を目にしたり、教科書などで見たことのある立体作品だ。色、質感、彫刻の表情などの情報は黒く消されているが、観ているうちに、平面的な黒いシルエットから、見覚えのある姿が頭の中で立体的に再現されてくる。
「観る人の想像力がかき立てられるのです。たとえば、ゴッホのひまわりを描いた(ブラックペインティングシリーズの)作品を観た方は、『頭のなかで黄色のひまわりを想像していくうちに、黒いシルエットなのに色が見えてきます』とおっしゃる方が多いです。」

 また、通常明るい照明が使われているギャラリー内だが、本展ではスポットライトで作品を照らしている。部分的に光をあてることで、より作品に奥行きと立体感が生まれて見える。

 国内外で個展を開かれるなど、高い評価と人気を誇る、「ブラックペインティングシリーズ」。これからの展開も楽しみにしつつ、まずは本展で「具象的なものを抽象的に描いた絵画を観ながら、頭の中で具体的な姿が浮かんでくる」鑑賞体験を、ぜひ楽しんでほしい。

【会期】2024年12月20日(金)〜2025年1月5日(日)※会期中無休
【開廊時間】12:00〜20:00 ※ただし12月31日(火)〜2025年1月3日(金)は12:00〜19:00

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