サム・ギリアム「The Flow of Color」

Pace ギャラリー(麻布台ヒルズガーデンプラザA 1-2階)

  • 2025/3/18(火)
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サム・ギリアム「The Flow of Color」

 戦後アメリカ絵画のもっとも革新的なアーティストのひとりとされる、サム・ギリアムの個展が、Pace 東京の1Fにて開催中。
本展は、Pace ソウルならびに Pace 東京での二部構成として企画され、今年初めにソウルでオープンした展覧会に続くものである。

 鮮やかな色彩に溢れ、木枠に張られていないキャンバス地で描かれた絵画を、展示スペースの壁や天井から吊るす《ドレープ》ペインティングを生み出したギリアムの作品は、メトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館、シカゴ美術館など、世界中の主要な美術館に収蔵されている。

 ギリアムは生前、米陸軍の事務官として横浜の基地に2年ほど駐留したことがあり、近くの画廊や木版画のアトリエに通っていた。その頃東京でイヴ・クラインの作品と出会い、日本の美術や建築との出会いと相まって、後に「ようやく私自身が本当のアーティストになる始まりであった」と当時を回顧している。

 本展では、ドレープの作品のほか、2018年から2022年にかけての晩年の数年間に制作した一連の水彩画も展示されている。
会場に入ると、波が押し寄せるような色彩の鮮やかさに圧倒される。窓から差し込む光を受け、輝くような色の美しさにため息が出そうになった。

 東京で展示される《ドレープ》の作品は、すべて2018年に制作されたもので、ギリアムがキャリアの後半で行った、セレックス・ナイロンを用いた質感、色彩、スケール、素材感の実験の変遷をたどるものとなる。一本のコードで天井から吊り下げられた《ドレープ》は、周囲をぐるりとまわりながら観ることができる。
これは、変わりゆく環境の中の能動的な要素として鑑賞できるもので、ギリアムが自身のキャリアを決定づけたこのフォルムから常に新しいエネルギーを獲得し、発見し続けた輝きを、より深く感じさせるものとなる。

 また、日本の和紙に水彩で描いた濃密な抽象画の作品にも、《ドレープ》に見られる折り目やひだが感じさせる奥行きが反映されている。支持体である紙に光輝く顔料を染み込ませることで、ギリアムは水彩画をイメージではなくオブジェへと変換させたのだ。

 本展会期中、サム・ギリアムも参加していた、1950年代にワシントンDCで始まった、抽象表現主義の芸術家たちによる芸術運動「ワシントン・カラー・スクール」の重要な画家である、ケネス・ノーランドの展覧会を同時開催している。
ぜひ併せて観ておきたい。

【会期】3月7日(金)〜5月6日(火)
【休廊日】月曜
【開廊時間】11:00〜20:00(19:00〜20:00、日曜の18:00〜20:00はアポイントメント制)
【写真】サム・ギリアム「The Flow of Color」展示風景、Sam Gilliam: The Flow of Color、1F; Azabudai Hills Garden Plaza-A 5-8-1 Toranomon, Minato-ku, Tokyo、March 7 − May 6, 2025、Photography courtesy Pace Gallery

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