シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)
1990年代以降の日本において、重要なペインターの一人として活躍を続ける、丸山直文の個展が開催中。
丸山は、たっぷりと水を含ませたコットンキャンバスを床に置いた状態で、アクリル絵具を染み込ませて描く「ステイニング技法」を用いる。
水を通して絵具の色彩がにじみ広がることで、境界がやわらかく溶け込んだように曖昧となり、具象でありながら抽象でもある、時間と空間が溶け合うような風景を描きだしている。
本展で観ることができる7点の作品のうち6点は今年描かれた新作で、うち5点は丸山が秋田、福島、新潟で実際に目にした風景をもとに描かれている。初めて観る絵なのに、「この風景、見たことがある」と懐かしさを感じるのはそのためだろうか。
ギャラリーに入って最初の部屋に飾られている《水を蹴る(NO DATE)》(2025年)や、《水を蹴る(つづいて)》(2025年)などの作品は、鮮やかで生命力あふれる緑が印象的で、春から初夏の風景なのだろうか、と考えながら観るのも面白い。
また、《水を蹴る(よばれて)》(2025年)の、空の美しさや色の表現も必見だ。いつもの丸山の絵と比較して、柔らかく幻想的なだけではなく、本展の作品全体から力強さを感じられる。
奥の部屋には、幅3.6メートルの大作《水を蹴る(そのことを)》(2025年)が飾られている。
この作品は、丸山ならではのやわらかい色合いと抽象的な線が印象的だが、絵の下の方に描かれている二つの水面に写り込む風景は、より写実的に、強い色で描きこまれている。同じ風景の描き方の対比が印象的だ。
本展では、丸山が日常的に撮影している写真を収めたアーティストブック『brackish water』が刊行されたが、あっという間に完売したそうだ。一冊ごと異なる装丁は、丸山が絵を描く際に色の出方などを試したキャンバスが使われていて、即時完売も頷ける美しさだった。
本アーティストブックはギャラリーに展示されているので、作品とあわせて「丸山が目にした世界」を見てみよう。
取材日は平日の午後であるにも関わらず、国内外からのゲストが後を絶たなかった。この時間帯は若い人が多く見受けられたが、勉強のために訪れる学生も多いとのこと。ぜひ気軽に足を運んでみてほしい。
【会期】4月19日(土)〜6月7日(土)
【休廊日】日月祝(4月29日(火)、5月3日(土)、5月6日(火)は祝日のため休廊)
【時間】11:00〜18:00
【画像】丸山直文「NO DATE」展示風景, シュウゴアーツ, 2025 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts
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