タラ・ドノヴァン個展

Pace ギャラリー(麻布台ヒルズガーデンプラザA 1階)

  • 2025/5/16(金)
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タラ・ドノヴァン個展

 アメリカの現代美術家、タラ・ドノヴァンの東京で初となる個展が、Paceギャラリー 東京の1Fにて開催中。
本展は、2003年から2024年にかけて制作された彫刻やインスタレーションが一堂に会し、ドノヴァンの20年にわたる創作の軌跡をたどる貴重な機会となる。

 ドノヴァンの作品は、ストロー、虫ピン、CD-ROM、スリンキー(ばね状の玩具)など、誰もが見慣れた日用品を素材にしている。しかし、彼女の手にかかると、それらはまったく新しい形態と意味を持つアートへと昇華する。素材の物理的特性を活かしながら、集合、反復、蓄積といったプロセスを通じて、観る者の知覚を揺さぶる現象学的な作品が生み出される。

 本展のプレスウォークスルーでは、アーティスト本人とPace ギャラリー副社長の服部今日子氏による作品の解説が行われた。
 ドノヴァンが作品に使う素材は、いずれも光に反応するものだという。会場入ってすぐ左手に飾られている、カットしたスリンキーを再構成した壁面彫刻や、窓辺に設置されている、CD-ROMディスクを垂直に並べた彫刻は、光を受けて輝き、観る時間や角度によって変化を楽しむことができる。

 身の回りにあるものがドノヴァンによって集合体になったとき、どのように変化するのか、本展の作品で観てみよう。
 会場の中央にある、高さ50センチを超える立方体の彫刻は、ピンでできている。小さなピンを重ねていって最後に蓋を取ると素材自体の重さで固まった姿で出てくるそうだ。もとのピンからキューブとして異なる姿になることが、この作品の面白いところだ。きっちりと角が立ったこの彫刻が、摩擦と重力だけで固定されていると知れば、観る者は驚かずにはいられない。窓から差し込む光で、美しく輝く姿も楽しんでほしい。

 また、会場に入って正面の壁を覆っている淡いクリーム色の彫刻は、ドノヴァンが活動初期から制作しているシリーズの作品で、よく見ると積み重ねたストローで構成されている。個体により茶色っぽく変化しているのだが、それが美しい模様を生み出し、雲が浮かぶ霞がかった空のようにも見える。
「どうぞ、耳を近づけてみてください」という服部氏の言葉に恐る恐る近づくと、ボーというような空気が通る音が聞こえる。視覚だけではない楽しみ方に、『アートって面白いな』という体験を得られるだろう。

 ドノヴァンの作品はニューヨークのメトロポリタン美術館など、世界中の機関に収蔵されているほか、現在バンクーバー美術館で開催されているグループ展や、2026年のシアトル美術館で開催される、大規模な二人展にも出展される予定だ。
日本でドノヴァンを代表する作品を一度に観ることができるこの機会に、ぜひ足を運んでおきたい。

【会期】5月17日(土)〜7月3日(木)
【休廊日】月曜
【開廊時間】11:00〜20:00(19:00〜20:00、日曜の18:00〜20:00はアポイントメント制)
【写真】タラ・ドノヴァン個展 展示風景、Tara Donovan、1F; Azabudai Hills Garden Plaza-A 5-8-1 Toranomon, Minato-ku Tokyo、 May17 − July 3, 2025、 Photography courtesy Pace Gallery

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