禪フォトギャラリー(六本木6-6-9 ピラミデ2F)
活動初期から一貫して繁華街の路地など、ストリート・フォトを中心に発表する、星玄人(ほし はると)の個展が開催中。本展では、2024年の秋に刊行した同名の写真集より選りすぐりの作品を展示する。
1990年代後半より写真を撮り始めた星は、カメラを手に新宿へ足繁く通うことで街の懐の深さや人の優しさ、温かさに心地よさを感じ、気がつけば新宿が自身の居場所となっていたが、時代の流れとともに街の様子が変わり、この街を訪れることも少なくなった。
街との距離ができた今、過去に新宿を撮影したモノクロームのネガを改めて見直し、未発表の作品を含む「あの頃」の新宿の記録を再編成したのが、本展の源となる写真集だ。
会場では、かつてテレビにも出演していたホストクラブの社長や、夜の街で働く人、路上で寝ている人など、少し前に夜の新宿で見かけたであろう光景が切り取られている。
ちょっと気になるけれど、真正面から見てはいけないような気がして、横目でチラリと見るような風景だが、被写体から何ともいえない生命力のようなものを感じる。
今の新宿から同じ空気を感じるだろうか。
タイトルにある2008年といえば、新宿・歌舞伎町のコマ劇場が閉鎖となった年となる。その跡地付近に現在どのような光景が広がっているか、どれだけ生命力に乏しい無気力な空気が流れているかと考えると、別の意味で見てはいけないような気持ちが沸き上がる。
「建物が変わっちゃうと、人の流れが大きく変わる」と、あれだけ魅了されていた街と距離を置いた星の気持ちが、本展の作品を見るとわかるような気がするのだ。
「身を置いて居るだけで気持ちが高揚していたあの頃の夜はもう遠い日の出来事のようだ。今はそんな新宿と自分との距離に安堵感すら覚えている」と、本展開催にあたってコメントを寄せた星が、再びこの街の「人が生きる力」に強く引き寄せられる日は来るのだろうか。
【会期】6月27日(金)〜8月9日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜19:00
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