シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)
今年で活動25周年を迎えるシュウゴアーツにて、クララ・スピリアールトを迎えたグループ展が開催中。
注目の若手アーティストが見せる新たな芽吹きと、彼女の作品の根底にある生命力に呼応するような作品群で、所属アーティストの層の厚さがうかがえる、見ていてワクワクする展覧会となっている。
クララ・スピリアールトはベルギーのゲントを拠点に活動するアーティストで、本展では新作を含む計6点の作品で、ドローイングから彫刻まで、多用な手法を用いて表現するスピリアールトの軌跡を追うことができる。
日本で幼少期を過ごし、16歳の頃に父の故郷であるベルギーに移住、少女から大人へと移ろう多感な時期に、文化的アイデンティティの揺らぎの中で成長したスピリアールトは、自然界や動物、身体やジェンダーへの深いまなざしをもつようになり、独自でユーモアのある世界観を生み出している。
本展会場では、新作の《Umbilical Birds》(2025年)や《Sprout Family Tree (from Family Tree series)》(2021年)などの陶器による立体作品が目を引くが、スピリアールトが焼きものを学ぶきっかけとなったという、ミクストメディアのシリーズ《Ikebana Collection》とあわせて観ることができるのも面白い。
芽キャベツが木から出ているような彫刻シリーズ「Family Tree series」は、家系図のように命が脈々とつながるイメージを表現している。一般的に家系図は父親側にフォーカスされがちだが、スピリアールトの女性側や個人にも焦点を当てた家系図をつくりたいという考えが、このシリーズに反映されている。
芽キャベツの筋は人間の毛細血管にも見えるが、スピリアールトの作品は人間の臓器や血管など、身体にイメージが重ねられた表現が多い。
メインビジュアルの作品でもある《Figwasp》(2022年)は、支持体(キャンバスや紙など、作品を制作するための土台となる素材)に石膏を使って立体感を出している。
色合いやモチーフは明るく可愛らしいが、よく見るといちじくの中にも虫が描かれており、その精巧さとリアルさにどきっとした。この虫はいちじくの受粉を助けるイチジクコバチで、この作品にも共生や生命の循環があらわれている。
ベルギーのゲントといえば、シュウゴアーツを牽引する作家の一人、小林正人の《画家の肖像(花はどこへ行った)》(2024年)も観ることができる。春を思わせる明るい色合いに、観ているだけで晴れやかな気持ちになる作品だ。
また、近年では幻想的な風景画のイメージが強い丸山直文が約30年前に描いた《morphogen (Brown)》(1994年)は、現在の作品と雰囲気の異なる抽象画だが、たっぷりと水を含ませたコットンキャンバスを床に置いた状態で描く「ステイニング技法」が当時から使われているという対比が面白い。
そのほか、手法や素材を探求する高畠依子の「CAVE」シリーズの作品《CAVE/弁柄》(2022年)や、ムラーノ島のガラス職人とのコラボレーションにより、周囲に溶け込みながら光の輪郭を描き出す、無色のガラス作品を制作する三嶋りつ惠の作品、西陣織の材料となる銀や金のアルミ蒸着紙を支持体に使用し、光を感じる絵画を描くアンジュ・ミケーレの作品が、会場で共鳴し合う。
【会期】8月30日(土)〜10月4日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00
【画像】「ShugoArts Show−スプラウト」展示風景, シュウゴアーツ, 2025 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。