六本木ヒルズ A/Dギャラリー

現代のSNS文化における「評価」や「承認欲求」などの欲望や不安定さをテーマに、「NEEDY(構ってほしい)」という概念を表現するアーティスト・SOMETAの個展が開催中。
本展は、去年同ギャラリーにて開催された個展『NEEDY vol.3.0』の続編となり、新作計22点を観ることができる。
去年の展覧会では、自撮りしているようにスマホをもつNEEDYな女の子のポートレートシリーズが並んでいたのが印象的だった。ちょうど1年経った今、SOMETAの制作スタイルなどに変化はあったのだろうか。
「幼いころから身近にあり、今も大好きな90年代のアニメやゲーム、ファッションなどの文化をオマージュといいますか、自分の中で咀嚼し、僕が描くキャラクターとして再構築して、1年間活動してきました。このスタイルが、今の自分が表現したいことにピッタリだと思っています」。
本展では、SOMETAが感じる2025年のムードやシーンを切り取った作品が展開されているが、彼のインスピレーションの源泉に90年代の文化があるためか、観ていると新鮮さの中にどこか懐かしい気持ちが湧いてくる。
「90年代を『楽しかったよね』と懐かしむ人もいれば、『当時を知らないけど、90年代文化の再流行を楽しみたい』という年代の人もいます。間の世代の僕は、作品を通して両者の橋渡しができると思っています。絵のタッチや色使いなどは、90年代のカルチャーから影響を受けていますが、人物の服装や髪型などの雰囲気は、今の女性のイメージで描いています。そのため、見方や捉え方で、人によっては今っぽい絵と言ってくださる方もいますし、懐かしさを感じて興味を持ってくださる方もたくさんいます」。
去年の作品と大きく違う点は、明るめの色で塗りつぶされていた背景が、今年は登場人物が店でピザを食べていたり、車を運転していたりと、状況や背景がていねいに書き込まれており、ストーリーが想像しやすく、さらに共感しやすくなったと感じる。また、よりカラフルになったことで作品の世界が豊かになり、観る楽しさがぐんと増した。
「絵を観る人の思い出などを呼び覚ますきっかけといいますか、どういうシーンなのかと想像しながら観て、その人のフィルターを通して記憶と重なることで、最後の1ピースがハマるように僕の絵は完成するのです。今回は車が登場する作品が多いのですが、実は昔の車種を描いています。車は、あの日誰とどこに行ったなど、記憶と結びつくことが多いので、ご自身の思い出と重ねながら楽しんでいただきたいです」。
この1年で、SOMETAは自動車メーカーの新車種発表のメインキービジュアルなどを制作担当したほか、海外でのアートワーク、コラボレーションなど、目覚ましい活躍を見せている。
SNSで、前回の『NEEDY vol.3.0』の総括を「これからの方向性や、やりたいこと、自分がどう在りたいかを改めて考えるきっかけとなった展示」と投稿していたが、その時の思いや気づきなどが本展にも反映されているのだろうか。
「観てくださる方のことを、より考えるようになりました。観る人があって完成するといいますか、フックをかけるような感じで制作することでさらに楽しんでもらえるなと感じ、これが自分のやりたい事だと改めて思いました。また、いろいろなことに挑戦することで筋力がついてくるように、表現の幅も広がってきたと思います。チャレンジする工程で壁が立ちはだかることもあれば、時間が足りないと思うこともあります。でも、描いている時間は楽しいですし、観てくださる人により楽しんでほしい、喜んでほしいと思いながら取り組みました」。
NEEDYな女の子を描いてきたシリーズも本展で第4弾となり、絵の登場人物も単なる「かまってちゃん」ではなく、ニュアンスのある少し大人へと成長している。同様に変化し続けているSOMETAの表現を追うことができるよう、『NEEDY vol.5.0』の開催も期待したい。
【会期】10月10日(金)〜10月26日(日)※会期中無休
【時間】12:00〜20:00
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