戸谷成雄「視線体:半彫刻」

シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2025/10/22(水)
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戸谷成雄「視線体:半彫刻」

 類い稀な彫刻論に裏付けされた作品群により、日本を代表する現代彫刻の第一人者、戸谷成雄の個展がシュウゴ・アーツにて開催中。

 戸谷は1975年に《竹藪》というパフォーマンスで、無数の視線の集積こそが彫刻を生み出すという彫刻理論を提示。その後、斜視線の束によって木材の表面をチェーンソーで彫り刻む「森」シリーズなど、『視線で彫る』戸谷彫刻を代表する数々の作品が生み出された。

 本展では、戸谷が2019年以来取り組んできた「視線体」シリーズの新作・11点を観ることができる。
全ての作品名にタイトルと同じ《視線体:半彫刻》がつけられており、会場では1点が床に置かれ、他の10点は壁に掛けた状態で展示されている。

 彫刻のように完全な立体ではなく、壁面や床という平面から浮き上がるように彫られた『半立体』の本展作品群を、戸谷は「半彫刻」と名付けたが、作家が企図したものは昔のレリーフに立ち返ることではなく、半分見えない不可視の領域を持つような彫刻のあり方の可能性だ。

 これは、私達の目に作品として見えている部分のみならず、地面や壁に埋まっている見えない部分にも彫刻が存在するのではないかという考えに基づいている。空間全体に広がり行き交う視線が床や壁の部分も貫き、見えない部分も彫られているというイメージなのだ。また、この世には見えるところと見えないところがあるという、戸谷の思想もその根底にある。
 この作品概念としての「半彫刻」には、戸谷が意図した“見えない部分の姿”はあるのだろうか、それはどのようなものだろうか、などと観る者が想像する余白もあり、新鮮な鑑賞体験が楽しめる。

 11点の作品は全て『視線で』彫られたものであるが、力強く真っ直ぐな視線が貫いたものもあれば細かく視線が行き交ったもの、やわらかい視線を巡らせたのか表面が滑らかな質感のものなど、多彩な表情をみせているので、1点ごとに細部までゆっくりと観てみたい。

 戸谷の彫刻理論を表す「視線体」シリーズの本会場での展示は、今回で3度目となる。
2019年の展示では、ギャラリー後室の四方の壁一杯に拡散する《視線体-散》が衝撃的であった。続く2022年の個展では《視線体-連》と《視線体-積》で、塊→散→連→積と連続する彫刻的展開をみせた。
 そして本展では見えない領域にも存在する「半彫刻」という概念の新しい展開となった。
これがさらに広がる様子を観ることができるのか、はたまた全く違う展開となるのか。今もなお精力的に制作を続ける戸谷の彫刻的冒険に、今後も注目したい。

【会期】10月18日(土)〜11月22日(土)
【休廊日】日月祝 ※「アートウィーク東京」開催に伴い、11月5日(水)〜9日(日)は10:00〜18:00にて開廊
【時間】11:00〜18:00
【画像】戸谷成雄「視線体:半彫刻」 展示風景, シュウゴアーツ, 2025 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts

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