泉屋博古館東京(六本木1-5-1)

近代の日本洋画に本格的な「写実」表現をもたらした鹿子木孟郎(かのこぎ たけしろう/1874〜1941年)の生誕150年を記念した特別展が開催。東京で鹿子木の作品をまとめてみる機会は約四半世紀ぶりとなる、本格的な回顧展だ。
明治の代になって7年目の1874年現在の岡山市に旧岡山藩士の三男として生まれた鹿子木は、絵で身を立てようと決意し18歳で上京、小山正太郎が主宰する画塾「不同舎」で西洋画表現の基礎を学んだ。
本展第1章では、不同舎で重点的に学んだ鉛筆素描で武蔵野の風景を描いた作品や、水彩や油彩なども用いて描かれた人物や風景画などの作品を観ることができる。
印象的だったのは、木炭で描かれたデッサン作品≪横向きの男≫(前期展示)で、光や濃淡による立体感と皺の一つ、髪の毛の1本までも細かく写実的に描かれた人物描写は、まるでその場で息をしているかのような圧倒的な存在感を放っていた。そのほか、岡山時代に描かれた作品なども見逃せない。
続く章では、パリに留学し、フランス・アカデミスムの巨匠ジャン=ポール・ローランスからフランス古典派絵画の写実の薫陶を受けた鹿子木の、描写力が深化した様がうかがえる作品が並ぶ。
また、本展では鹿子木が住友家に届けたローランスの代表作などもあわせて観ることができる。
会場で一番大きな展示室では、鹿子木の二度目のフランス留学中にサロンに出品・入選した≪ノルマンディーの浜≫とその習作やスケッチなど、鹿子木の代名詞ともいえるリアルな人物表現を誇る数々の作品が展開されている。
義母をモデルとしている≪某未亡人の肖像≫などの人物画は、その姿だけではなく、感情のゆらぎなどその内面まで写し取っているようだ。
また、各展示室へと続くホールに展示されている≪大正12年9月1日≫は、関東大震災の様子を描いた震災画だ。
約1か月にわたり震災後の惨状を記録し、油彩スケッチを残したという鹿子木の、記録者としての強い使命感が込められている大画面の作品を、じっくりと観ておきたい。
【会期】1月17日(土)〜4月5日(日)※会期中展示替えあり(前期:1月17日(土)〜2月23日(月・祝)、後期:2月25日(水)〜4月5日(日))
【休館日】月曜日(2月23日は開館)、2月24日(火)
【時間】11:00〜18:00(金は19:00まで)※入場は閉館の30分前まで ※会期中の各イベントの詳細は泉屋博古館東京ホームページより確認ください
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。