片山博文「羊をつくる」

TARO NASU(六本木6-6-9 ピラミデ4F)

  • 2023/6/30(金)
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片山博文「羊をつくる」

 写真の姿を借りた「偽物の写真」を作り出し「本当らしさ」とは何かを問い続ける、片山博文の10年ぶりとなる個展が開催中。

 片山博文は1980年広島生まれ、東京綜合写真専門学校研究科卒業、現在は広島にて制作活動中。
 主な展覧会に、2013年「Facts in Flatness」(TARO NASU)、2009年「Exchangeable」(TARO NASU)、2008年「VOCA展2008 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)などがある。

 本展において、片山は人工知能(AI)による画像生成である「敵対的生成ネットワーク(GAN)」の手法を用いた新作を発表している。展示されるすべての作品は、片山自身が撮影した大量の写真を学習データとして使用することで生成されたイメージである。

 あくまでもイメージなので、実際には存在しない。しかしながら会場には、もっともらしく存在しそうな羊の顔や広島平和記念公園の木の画像作品が並んでいる。また、英文や日本文の書籍から切り取られたような作品は、よく見るとそれらしい文字の形が並んでいるが、意味を成すものではない。

 「人工知能を用いた画像生成は、単純な機械的な操作でもなく、かつ人為的な行為でもないところが面白い」と語る片山は、これまでも「本物」という概念に対して人間が見せる執着への興味を制作の重要な要素としてきた。「偽物」と比べることでしか「本物」は確認しえないのか。写真は「現実の偽物」と言い得るのか。「写真の偽物」は「現実の偽物」でもあり得るのか。写真が映し出す「本物」とはなんなのか。

 人工知能によって写真のリアリティが急速に失われつつある現代において、片山の新作は「本物」という存在をめぐる複雑で奥深い迷宮に鑑賞者を誘いこむものである。

【会期】6月30日(金)〜7月29日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00

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