山田康平 「Strikethrough」

タカ・イシイギャラリー(六本木6-5-24 complex665 3F)

  • 2023/7/6(木)
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山田康平 「Strikethrough」

 モチーフに捉われず色で作品を作る山田康平の個展がタカ・イシイギャラリーで開催中。同ギャラリーでの初個展となる本展では、大小様々なキャンバスに描いた油彩画とアルシュ紙を用いた新作が紹介されている。

 本展のタイトル「Strikethrough」には、取り消し線と印刷用語で紙の裏までインクの油分がにじみ出る現象を指す二つの意味が存在する。
 山田の制作は、キャンバスと紙にたっぷりとオイルを染み込ませることから始まる。起点や輪郭となる黒の線をひき、絵の左上には光に見立てている黄色をのせ、それから強く鮮やかな色で一気に画面を覆う。絵の具は画面に染み込んだオイルや隣の色と溶け合い、時には思いもよらない色が生まれ、色面が構成されていく。筆を重ねることでキャンバスの表面は更に滑らかに整えられ、面と面がぶつかる場所から浮かび上がる色は強さを増し、何層にも重ねられたレイヤーから山田作品特有の奥行きが絵画空間に生まれている。そして同ギャラリーのバルコニーから降り注ぐ光がよりその魅力を惹き立てている。

 最近の殆どの作品を刷毛で描いているという山田は、「その動かし方は寄せては返す海の波の動きと、同じような感覚を覚えます。海を外から眺めていると分からないですが、実際は思っていたよりも深かったり、冷たさを感じますが、その感覚は、海は人のために存在していないことを思い出します。私は絵を描く時に表面を感じるだけではなく、そこには裏が存在することの認識を忘れないように描いています」と本展に寄せている。

 実際に作品を鑑賞すると、油彩ながらほとんど凹凸がなく、使用する色も少ないながら吸い込まれそうなほど奥行のある空間が感じられる。その中には山田が見つけ出した物事の意味や本質が存在している。

【会期】7月1日(土)〜7月29日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜19:00
【画像】Kohei Yamada “Strikethrough”, installation view at Taka Ishii Gallery, Jul 1 - 29, 2023. Courtesy of Taka Ishii Gallery / Photo: Kenji Takahashi

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