TARO NASU(六本木6-6-9 ピラミデ4F)
コンセプチュアル・アートの中心人物のひとりで、言語を媒介とした作品で知られる、ローレンス・ウィナー(1942〜2021年)。TARO NASUでは3回目、そして2021年にウィナーが亡くなって以来、初めての個展が開催されている。
壁や床など展示空間の構造体に直接描かれたテキスト作品は、ペインティングよりもさらに三次元性を有するもの、すなわち「sculpture(彫刻)」だと言及するウィナー。
今回は、タイトルにもなっている「EMPTIED UNTIL FULL(いっぱいになるまでからっぽに)」など、展示室の壁に描かれた4点の「彫刻」と2点のドローイングに加えて、特別なエディション作品が、彼の世界観を静かに鑑賞者に提示している。
会場内にはアーティストとしての自らの姿勢を語った言葉として知られる下記の宣言、《Declaration of Intent》(1968)も特別展示されている。和訳をすると、次のような意味が込められている。
「1.作家は作品を構成してもよい。2.作品は制作されてもよい。3.作品は構築される必要はない。各項とも作家の意図に関して同等で矛盾が無いので、作品の在り方の決定権は受け手の受け取り方に委ねられる。」
ウィナーの作品はテキスト内容自体は不変だが、レイアウトや色、素材は展示会場に合わせて可変である。所有者は展示せず所有しているだけで構築しなくても良い。だからこそ、ウィナーは作品を完成するために、所有者ばかりでなく、鑑賞者にも作品にかかわる責任があるという意味合いを宣言に含んでいる。
宣言の内容は難しいが、作品の見方に正解などない。ウィナーは作品に対するさまざまな心象を肯定している。テキストや記号の意味に思いめぐらせながら、それらが創り出す不思議な緊張感のある会場の空気感や、沸き上がってきたものなどを自由に感じたい。
【会期】5月11日(土)〜6月15日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00
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