サントリー美術館
サントリー美術館の開館以来、初の「儒教」をテーマとした展覧会が開催中。
出品総件数105件、うち国宝1件、重要文化財4件等の指定品を含み、同テーマの展覧会では過去最大規模となる本展は、日本人の心や生活に大きな影響を与えてきた儒教と日本美術との関係にフォーカスする。
儒教は紀元前6世紀の中国で孔子と弟子たちが唱えた思想。日本には仏教よりも早く、4世紀初頭には大陸から伝来したと言われている。当初は主に宮廷や寺院で享受されてきたが、江戸時代以降になると、為政者から民衆、子どもに至るまで広く浸透してきた。その様をひも解くために重要な鍵となるのが、日本美術への影響だ。本展では儒教を取り入れた層に注目し、時代順に並ぶ形で作品を紹介している。
為政者の学問としての儒教に注目した第1章では、宮中の重要な儀式が執り行われた紫宸殿にて高御座を飾った、狩野孝信作 重要文化財《賢聖障子絵》(通期展示・面替えあり、仁和寺蔵)など、狩野派の主要な絵師をはじめとする、為政者と関係の深い当代きっての絵師たちが制作した、宮中や城郭を飾った作品が並ぶ。
南禅寺に所蔵されている伝 狩野永徳作 重要文化財《二十四孝図襖》は元来、正親町院仙洞御所の内部を飾っていたといわれるもので、普段は非公開。本展では特別に、十四面のうち八面を前期後期に分けて、四面ずつ観ることができる絶好の機会となる。
第2章では、名品を通して禅僧と儒教の関係に注目。国宝『尚書正義』(前期:第一冊、後期:第二冊展示)をはじめとする南宋時代の貴重な儒教経典や、日本最古の学校として栄えた足利学校でまつられてきた、国内現存最古の彫刻による孔子像など、貴重な品々が紹介されている。
内覧会の日は、『尚書正義』の展示で、昭和の元号の典拠としても広く知られている箇所を観ることができた。ぜひ会場でその一文を見つけ、儒教が私たちの生活になじみが深いものであることを感じてほしい。
そのほか、江戸時代に入ってから官学となり、狩野派の絵師たちが幕府の姿勢を反映した作品の制作を行った様子や、湯島聖堂の歴史と伝存する作品が紹介されている第3章、幕府の政策によって儒教が民衆まで広まり、日本美術と儒教の関係性がどのように変化したかを観ることができる第4章では、錦絵など、儒教の思想を投影した作品を観ることができる。
なじみがないように思われても、今の私たちにも通じるメッセージを宿している儒教。現代では忘れられがちなこころのあり様を日本美術の名品を通して受け取り、より良く生きるためのヒントとしてみてはいかがだろうか。
【会期】2024年11月27日(水)〜2025年1月26日(日) ※会期中展示替えあり
【休館日】火曜(1月21日は18:00まで開館)、12月30日(月)〜1月1日(水・祝)
【時間】10:00〜18:00 (金曜、1月25日は20:00まで開館) ※入館は閉館の30分前まで
【画像】「儒教のかたち こころの鑑―日本美術に見る儒教―」展示風景
右:重要文化財 二十四孝図襖 伝 狩野永徳 十四面のうち四面 南禅寺(通期展示・面替えあり 本場面の展示期間:11月27日〜12月23日) 奥:二十四孝図屛風 伝 狩野永徳 六曲一双 福岡市博物館(前期展示:11月27日〜12月23日)
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