泉屋博古館東京(六本木1-5-1)
泉屋博古館東京にて、企画展「花器のある風景」が開催中。
花がいけられた絵画では、主役である花に目がいきがちであるが、本展では絵画に描かれた花器に光を当て、作品を紹介。
住友コレクションから、花器が描かれた絵画や花器を展開すると同時に、華道家・大郷理明氏より泉屋博古館に寄贈された花器「大郷理明コレクション」を観ることができる。
本展の第一章では、花器の描かれた作品を通して、近世以降に見られた花器への関心や、その表現の様子を観ることができる。
原在中・在明作の《春花図》に精密に描かれた花器など、その形や花のいけられ方、装飾の優美さや風情に宿るバリエーションの豊かさに気づくことができ、今後は花を描かれた絵を観る際は、花器の描写にも着目したいと思わせられる作品が並ぶ。
一番広い展示室には「大郷理明コレクション」のうち、その中核をなす銅花器の数々が展開されている。
繊細な透かし彫りを施されたものや、ユニークな形状のものなど、色やモチーフ、様々な意匠は観ていて飽きることはない。
特に見てほしいのは、表面に施されている着色だ。
中国の銅花器は、基本的に古色をまとい、地中から出土した際の表面錆の風合いを重視。漆黒色、緑色、褐色などの単色、もしくはそれらの組み合わせで仕上げることが多いのに対し、日本では中国銅花器に似せた表面着色のほか、独自の表面処理技術により褐色、黒色、赤色などを混ぜ合わせ、見る方向によって色合いが変化するような着色技術が行われた例が見られるという。
会場でも、あらゆる色が浮かび上がってくるような作品を多く見ることができる。
陶磁器の風合いを表した《青海波釉垂薄端》は、皿部と釉垂部のみ赤褐色を混ぜることにより、釉が垂れるさまを艶やかに表現している。
そのほか、牛が薪を運ぶ様子を表わした《紫銅牛形薄端》は、牛の身体の部分ごとに施されている着色や、頭部の産毛の表現、薪一本一本の形など、細部まで施された技に注目してほしい。
また、銅で作られているのに木製のように表現された作品の数々も面白い。特に《松竹梅図寸筒》は、全体が縦方向に三区に分けられ、それぞれに松竹梅の文様をほどこしているが、松文様の部分には松樹肌、竹文様の区画には竹の節が、梅文様の区画には梅樹肌がそれぞれ表現されており、銅ではなく3種の樹木を合わせて作ったような風合いだ。
美術品保護のため、実際に花をいけて展示されてはいないが、本展展示の花器を用いた大郷理明氏の作品数点を写真で観ることができ、イメージが膨らむ。
花器を観て花をいけた姿を想像し、花をいけた絵に描かれる花器にフォーカスする。これまでにない楽しみかたができる展覧会だ。
【会期】1月25日(土)〜3月16日(日)※大郷理明コレクションのみ2/17に展示替えあり
【休館日】月曜日(2月24日は開館)、2月25日(火)
【時間】11:00〜18:00(金は19:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
※会期中の各イベントの詳細は泉屋博古館東京ホームページより確認ください
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。