Gallery & Restaurant 舞台裏(麻布台ヒルズガーデンプラザA B1)
美濃焼きの伝統を基盤としつつ、その造形に現代的な再解釈を加えた独自の表現で知られる陶芸家・桑田卓郎の個展が開催中。
茶陶文化の伝統技法を用いつつ、大胆な模様や質感を追求した創造性に富む桑田の作品は、世界各地のパブリックコレクションに収蔵されているほか、国内外のファッションブランドとのコラボレーションでも知られている。
最近では本展会場の上のフロアにある、麻布台ヒルズギャラリーで開催した「ポケモン×工芸展」でも、桑田の作品は話題になった。
本展会場の入り口には「うどん」と書かれたのれんがかかっており、中には桑田の代表作である、梅花皮(かいらぎ/表面の釉薬が縮れ、下の素地が見えることで作られる凹凸の模様を指す)の大きな作品と一緒に、彼の原点ともいえる「食」に関する手仕事のクラフトライン「く」の器や道具が並んでいる。
これはどういう展覧会なのだろう、と来場者は不思議に思うだろう。
本展は、桑田が釉薬を混ぜる為にうどんを捏ねる機械を取り入れたことをきっかけに、アトリエを訪れたゲストにうどんを振る舞うようになったことから、着想を得ている。
陶芸に使用する道具と調理器具のイメージを重ね合わせ、うどんを振舞うパフォーマンスも兼ねた、インスタレーション形式の体験型展覧会だ。
会期中には、桑田の作品で食事をする体験を、曜日や時間によって異なる3つの形で楽しめる。
平日の昼限定のイベントは、桑田が自身の多治見のアトリエで来客に振る舞うことがあるという「うどん」を、Gallery & Restaurant 舞台裏の箱石和行シェフがアレンジして提供。レストランスペースで、桑田卓郎+「く」の作品を使った飲食体験ができ、参加費は1,200円。
土日・祝日限定のイベントでは、桑田卓郎+「く」の作品を使って、展示空間で釜揚げうどんを食べることができるのだが、驚いたのは、梅花皮の大きな作品に専用の鍋が入れられており、うどんを釜揚げするのだ。思わず「良いのですか?」と尋ねてしまう。
器は使われてこそ、と頭では理解できるのだが、これだけ立派な作品からうどんが供される様子を見る機会は滅多にない。この貴重な体験は1,600円で参加できる。
もちろん、展示を観るのは無料なので、気軽に作品鑑賞を楽しむこともできる。
また、平日の夜限定で、桑田卓郎+「く」の作品を実際に使い展示空間で、箱石シェフのフルコースを楽しむ体験も用意されている。これは一日6組限定の完全予約制となる。
桑田がアトリエで振る舞うことがあるという、うどんを再現した味は、だしの風味がやさしく気持ちが温かくなる。それは味だけではなく、桑田の「おもてなしの心」も含めて体験できるからだろう。
日本の現代陶芸をけん引する作家として、世界的に注目される桑田の作品を実際に手に取り、食事をする体験はなかなかできない。本展はレストランを内包しているギャラリーだからこそ、実現したものだ。
今後も桑田の作品とパフォーマンスを楽しみにしたい。
【会期】1月25日(土)〜3月16日(日)
【定休日】月曜 ※祝日の場合は翌平日が休業日
【時間】ギャラリー:11:00〜20:00 レストラン:ランチタイム/平日12:00〜15:00(L.O.14:30)ディナータイム/17:00〜22:00(L.O.21:00)、土曜 12:00〜20:00(L.O.19:00)、日曜・祝日 12:00〜18:00(L.O.17:00)※麺が売り切れ次第終了 ※平日の夜限定のアーティストの器を体験する特別コースは、一律19:00開始
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