「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」プレス内覧会

森美術館

  • 2025/2/12(水)
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「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」プレス内覧会

 ゲームエンジン、AI、仮想現実(VR)、生成AIなどのテクノロジーを採用した現代アート約50点を紹介する展覧会が森美術館にて開催。

 森美術館はこれまでに、新しいテクノロジーを使った作品を展覧会出展作品の一部として展開したこともあるものの、「テクノロジーとアート」をメインテーマとした展覧会は、22年目にして初の試みとのこと。
美術館の空間でどのような作品と出会えるのか、入場前から期待が高まる。

 会場入口には、「マシン・ラブ展をもっと楽しむための用語集」と書かれたパネルがある。これは26のテーマを選び、生成AIを用いて作成した文章を学芸員が監修したもので、『小・中学生でも理解しやすいように』と構築されている。QRコードを読み取ると、スマートフォンでも確認できるので、作品を鑑賞するための手がかりとなるだろう。

 最初の空間では、アメリカのアーティスト・ビープルによる回転するビデオ彫刻《ヒューマン・ワン》(2021年〜)が、展示されている。
これは、メタバースで生まれた最初の人間が、変わり続けるデジタルの世界を旅する様子を表現しているもので、アーティストが生涯アップデートし続ける予定という作品だ。《ヒューマン・ワン》が背負っているリュックには、これまで展示されてきた会場のロゴが入っている。次の展覧会では、森美術館のロゴも追加される予定だ。

 自身も仏教の実践者であるという、ルー・ヤンの作品《独生独死−自我》(2022年)は、自身のアバターが仏教世界のさまざまな次元を旅しながら「生と死」について問う映像シリーズであるが、インスタレーションを含めてその独自の世界観に引き込まれ、圧倒される。

 仮構の都市の中で、巨大な工業品が生き物のように動き出す不思議な映像を3DCGで制作している、藤倉麻子の《インパクト・トラッカー》(2025年)や、地政学、神話、テクノロジー、未来的な図像が融合した「スぺキュラティブ・フィクション」と呼ばれる物語をもとに、ビデオ、VR、ゲーム・シミュレーションなどを制作するキム・アヨンの《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022年)などの映像作品のほか、長年の研究を通じて蓄積してきたイメージと、自身の初期作品のデータを融合させた、アニカ・イの「絵画」シリーズなど、一見、非デジタルな作品でありながら、制作過程にもさまざまなテクノロジーが使われている作品も観ることができる。

 本展を観る前は、「テクノロジーを使ったアートを理解するのは難しそう」と思うかもしれない。
だが、生成AIや3DCGなどの最新技術を用いた作品も、表現法が異なるだけで、アーティストが表現したい根底にあるものは変わらないので、気負わずに楽しむことができると思われた。

 テクノロジーはアートの表現法の一つとして、今後どのような可能性が広がるのか、人間がテクノロジーとともにどのような世界を構築していくべきなのか、本展を観て考えてみるのも良いだろう。

【会期】2月13日(木)〜6月8日(日)※会期中無休
【時間】10:00〜22:00(火曜は17:00まで) ※ただし4月29日(火)・5月6日(火)は22:00まで ※入場は閉館の30分前まで
【写真】「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」プレス内覧会 フォトセッションの様子
左から、ルー・ヤン(陸揚)氏*、藤倉麻子氏*、マーティン・ゲルマン氏(森美術館アジャンクト・キュレーター)、片岡真実氏(森美術館館長)、ヤコブ・クスク・ステンセン氏*、佐藤瞭太郎氏*、キム・アヨン氏*、平山めぐみ氏*、ビープル氏*、畠中実氏(本展アドバイザー)、谷口暁彦氏(本展アドバイザー)、
ディムート氏*、矢作学氏(森美術館アソシエイト・キュレーター)
 *は、本展出展作家

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