手法は語る

シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2025/2/27(木)
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手法は語る

 シュウゴアーツにて、5人のアーティストによるグループショーが開催中。

 本展は、シュウゴアーツの顔ともいえる、イケムラレイコ、小林正人、畠依子、戸谷成雄と、ゲストアーティストとして陶芸家・安永正臣を迎えた、5人の作品・計13点を紹介し、それぞれのアーティストの制作手法にフォーカス。どのように手法を確立し、個性豊かな作品として展開していったかを観ることができる。

 会場に入ると、安永正臣の大きな陶芸作品《溶ける器》が目に飛び込んでくる。
通常、陶芸では土で造形を行い、釉薬は保護や装飾を目的として、土台の上からコーティングして使われるが、安永は釉薬をメインとして造形を行う手法を用いる。
ガラス質の釉薬は、焼成する時の熱で溶けてしまうので、この作品名がついているのだろうか。
安永は釉薬に粘性を持たせ、土や砂で周囲を固めて焼成したあと、作品を掘り出す手法で、“溶けた作品”をつくるのだ。
 《溶ける器》の表面や内側には、焼成時に付着したものか意図して残したものか、砂や石がところどころについている。作為的にできた表現と偶然によって出てきた表情との多彩さ、美しさを観てほしい。

 壁に飾られている大きな絵画、畠依子の《MARS 11》は、酸化鉄から成る黒色顔料・マルスブラックを、磁力を用いて制作されている。磁力の反発や引き合いによって線が広がったり、引き寄せられ移動したりなどの変化が生じる。
実験・思索・試行を積み重ね、生まれた手法とその発想に感嘆せざるを得ない。
 奥の部屋に飾られている畠の《CANVAS》シリーズは、黄麻を用いて独自にキャンバスを平織りし、その織り目の線に沿って面を形づくる、キャンバスを再生成したかのような絵画だ。
 また、近くに飾られている球体の作品も同じ《CANVAS》シリーズと聞いて、驚いた。ウールの繊維を棒に巻きつけ、ゆっくり回転させながら針を刺してフェルト化した、本作品《CANVAS / 原始回転》は、立体作品でもあり、絵画作品でもあるという。

 同じ部屋で紹介されている、小林正人の《LIGHT PAINTING #10》は、ベルギーから帰国し、広島の鞆の浦(とものうら)にアトリエを構えた頃、海にきらめく光に触発されてつくられたシリーズの作品だ。
一瞬、シルバーのキャンバスが飾られているのかと思ったほど、銀の絵具がむらなく塗られている。見慣れている小林の絵画とは異なる印象だが、キャンバスを木枠に張りながら擦り込むようにして色を載せるという、小林独自の手法が使われていることには変わりない。
部分的にキャンバスがたるんでいるところが光を感じさせ、新鮮な鑑賞体験ができる作品だ。

 そのほか、彫刻家・戸谷成雄の《森化 II》は、戸谷が主流とする、チェンソーを用いて木材を削り出す手法の作品だ。チェンソーと聞くと、大胆に削っていくイメージだが、繊細な技術が使われている。戸谷が「彫刻は視線で掘る」と表現するその手法を、ぜひ自身の目で観てほしい。
 ペインティング、テラコッタ、ブロンズ、ガラス、写真、詩といった多様なメディアを用いて制作を続け、国内外で作品がコレクションされているイケムラレイコは、本展では抽象的な絵画《hit by blue》が紹介されている。あえて白く下塗りしないままのキャンバスにテンペラ絵具と油絵具が使われており、色の出方や筆運びにも注目して観るとおもしろい。

 素材や手法に注目し、アーティストの多様なアプローチの背後にある「理由」を感じとりながらの鑑賞は、貴重な機会となるはずだ。

【会期】2月22日(土)〜4月5日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00
【協力】Nonaka-Hill
【画像】手法は語る 展示風景, シュウゴアーツ, 2025 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts

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