21_21 DESIGN SIGHT(赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
岐阜県の東濃地方西部を中心とした地域でつくられる陶磁器の総称である美濃焼は、日本のラーメン丼(どんぶり)の90パーセントを占める。
本展は、展覧会ディレクターに、グラフィックデザイナーの佐藤卓氏とライターの橋本麻里氏を迎え、全40点のオリジナルラーメン丼を展示するほか、建築家・デザイナー3組の設計による「ラーメン屋台」や、「ラーメンと丼の解剖」、ラーメンの文化や歴史、器の産地である東濃地方の風土や環境、歴史について紹介する。
ギャラリー1では、「見た目」「香り」など、さまざまな要素から成り立つ「ラーメン」の概念を解剖した展示のほか、日本各地のラーメン店で使用されているどんぶり約250点が一堂に並べられている。
実際に訪れたことのある店や、旅行ついでに行ってみたい店の丼を探しながら見るのも楽しい。
ギャラリー2の手前では、佐藤氏と橋本氏が2012年から取り組んでいる美濃焼に関するプロジェクト「美濃のラーメンどんぶり展」をさらに発展させ、アーティストやデザイナー、著名人らがデザインした丼とレンゲが、新作10点を含む計40点、ラーメン屋に設計された什器に並ぶ。赤いのれんがかかる会場は、ラーメン好きなら特にワクワクするだろう。
それぞれの丼には、製作者のコメントと実際にラーメンを盛り付けたイメージが添えられている。デザイン発想の源やラーメンにまつわるエピソードを読むのは楽しい。また、画像を見ながら「この丼なら、あのラーメンが食べたいな、食べる前とスープを飲み干した後のイメージが変わって面白いな」などと考えたり、だれかと来場した場合は、「どの器で食べたい?」など、感想を共有するのも良いだろう。丼とレンゲがゆっくりと回転しながら展示されているのも、あらゆる角度から見比べることができてありがたい。
丼をデザインした40人は、本展ディレクターの佐藤卓氏や21_21 DESIGN SIGHT ディレクターの深澤直人氏をはじめとし、田名網敬一氏、横尾忠則氏、糸井重里氏、ヒグチユウコ氏など、数名上げただけでも豪華な顔ぶれだ。
また、ギャラリー2の奥では、美濃焼の伝統技法で作られたラーメン丼が並ぶほか、マスプロダクトやアートなど、さまざまな美濃焼の展示と、1990年代から不用となった食器回収の全国ネットワークを構築し、回収後に「セルベン」と通称されるリサイクルを使った製品の開発に取り組む「土のデザイン」の未来に関しても紹介している。
今や国民食の一つともいわれ親しまれているラーメンを器を通してひもとくことで、私たちの身近にある物の歴史や背景、循環の形や今後について、考える良いきっかけとなる展覧会だ。
【期間】3月7日(金)〜6月15日(日)
【休館日】火曜(4月29日、5月6日は開館)
【時間】10:00〜19:00 ※入場は18:30まで
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