奥田雄太「Cat Garden」

六本木ヒルズ A/Dギャラリー

  • 2025/4/4(金)
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奥田雄太「Cat Garden」

 ファッションブランドでデザイナーとして活動後、アーティストに転向し、国内外の個展やグループ展にて目覚ましい活躍をみせる奥田雄太の個展が開催中。

 奥田はキャンバスに絵具を直接絞り出し、ヘラでのばしながら描くという独自の手法で制作する。混じりあう色が生み出す偶然性の高い絵は抽象的にも見えるが、ペンによる精密な線が描かれると、ぐっと具象的になり、偶然から必然へと姿を変えるのだ。
力づよいストロークにより強調された色彩と、細かな線描が共存する奥田の絵は、見る者に強い印象を残す。

 もともとファッションデザイナーであった奥田は、色をたくさん使う世界にいた反動もあり、緻密な線で描くモノクロの絵画を制作していたが、コロナ禍を経て『やはり色の力は大きい、色を使って描きたい』と、アクリル絵具を採用するようになった。
 「このシリーズの作品は色に目が行きがちですが、主役は線です。線でどのようにフィニッシュさせるか、どうやったら線が生きるかと考えて生み出された手法です」。

 奥田がメインテーマとして描き続けている、花のシリーズ《with gratitude》は、モノトーンはかっこよく、ゴールドやブラウンが主体のものは豪華で、カラフルなものは色の妙に心が躍るような作品シリーズだ。
偶然が生む色の重なりや交わりが印象的だが、色を伸ばした時に意図しない色合いになることはないだろうか、と思って質問すると、奥田はキャンバスの上に画材を乗せた時点で、出来上がりをイメージすることができるという。これはファッションデザイナーをルーツとし、類まれなる色彩感覚をもつからこそ、取ることができる手法なのだろう。

 本展では奥田の作品シリーズの一つである、「beautiful foodchain(美しき食物連鎖)」から着想を得た作品が並び、奥田が愛してやまない猫たちの園を描いている。
「《beautiful foodchain》ではいろいろな動物を描いていますが、今回は大好きで、身近な存在でもある猫にフォーカスしました」と語る奥田の家には、10年以上一緒に暮らす2匹の猫がいるという。

 「コロナの時期に、当たり前と思っていたことがそうではないと気がつき、自分の周りにあふれる当たり前に感謝するという気持ちで花を描いていました。展覧会に来た人が、前向きな気持ちで会場を後にできるようにと、願いを込めて。これはやりたい事でもありましたが、『アーティストとして、今自分がやるべきことは』と使命を感じてもいました。でも、今回は『愛でたい、かわいい、なでたい、吸いたい!』と、ただひたすら大好きな猫を描きました。これも今の自分の気持ちを素直に表現したものです」。

 本展の作品を「ああ、かわいいな…」とうっとりしながら描いたというだけあり、どの作品からも幸せな気持ちが溢れ出てくるようだ。猫が動いた時の筋肉の動きに光を当てたものや、毛並みを精密に表現したものなど、個性の違いを比べて観るのも面白い。
また、花と猫ではそれぞれ描く手法が異なるそうなので、一つの作品でそれぞれの表現を楽しむことができることも嬉しいポイントだ。

 美しい花々が咲き誇るこの季節、花に囲まれた猫たちの姿を愛でてみてはいかがだろうか。

【会期】4月4日(金)〜4月20日(日)※会期中無休
【時間】12:00〜20:00

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