泉屋博古館東京(六本木1-5-1)
明治から大正昭和にかけて活躍した日本画家・木島櫻谷(このしまおうこく)の絵画表現の特質をライトアップする展覧会シリーズの第二弾が開催中。
本展では櫻谷の描いた人物画にスポットを当てるとともに、これまでの櫻谷の展示会よりも多くの写生帖を展示し、線描の妙を探訪する。
会場展示の第1章では、櫻谷の写生帖が展示されている。15〜16歳ごろ、今尾景年の門に入った頃に描かれた最初期のものは、たどたどしい線であるが、次第にのびやかに、表現が豊かになり、さらに筆数を減らして対象の動きや存在そのものを写し取るクロッキー的な描写へと変化していく様子が見られる。
生涯片時も写生帖を離さなかったという櫻谷の、線だけで立体感や質感を見事に表現する様子を、この章でじっくりと見ておきたい。
続く2章では、本画を観ながら櫻谷の線をたどることができる。
目を描くだけで3色もの線が施されているなど、チェックしたいポイントがたくさんあるが、絵の脇に添えられているパネルに、見るべきところの拡大図や分かりやすい解説が載っているので、絵画鑑賞が何倍も楽しくなる。
《唐美人》の控えめで流れるような線や、《かりくら》の草がなびいているような線、躍動感のある馬の身体やたてがみがなびく様子を表した筆づかいなど、線に着目して観ると、絵画の中の登場人物が生き生きと動き出してきそうだ。
3章では、住友家本邸を飾った四季連作屏風が全点公開されている。
こちらでも、線が一つのみどころとなる。《秋草図》のススキの葉の動きや、《柳桜図》の柳の枝や葉が織りなす曲線、《菊花図》の葉脈は、葉先に向かって細く繊細になる線の表現はもちろん、葉の表側の葉脈は赤金が、裏側は青金と、線の色が使い分けられているところにも注目したい。
また、同時開催の特集展示「住友財団助成による文化財修復成果―文化財よ、永遠に 2025」では、公益財団法人住友財団が推進してきた文化財維持・修復事業助成により蘇った作品を展示し、文化財修復の最前線を紹介。
修復に使われる道具や、ケルン東洋美術館が所蔵する《十一面観音菩薩像》、筑波大学付属図書館収蔵の狩野山雪筆《歴聖大儒像》の修理工程が、修復後の作品と一緒に展示されている。なかでも、《十一面観音菩薩像》は修復後初の公開となるので、忘れずに観ておきたい。
【会期】4月5日(土)〜5月18日(日)
【休館日】月曜日(5月5日、翌6日は開館)、5月7日(水)
【時間】11:00〜18:00(金は19:00まで)※入場は閉館の30分前まで ※会期中の各イベントの詳細は泉屋博古館東京ホームページより確認ください
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