TOTOギャラリー・間(南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)
建築家・篠原一男(1925〜2006年)の生誕100年を記念した展覧会が開催中。
「住宅は芸術である」と唱え、小住宅の設計に多大なエネルギーを費やした篠原の住宅は、日本における現代住宅のひとつの到達点を示すものとして、現在国内外で再評価の機運が高まっている。
本展では、建築家の奥山信一氏、貝島桃代氏、建築史家のセン・クアン氏をキュレーターに迎え、生涯を通して自らに「問い」を投げかけ続けた篠原の建築家像を、「永遠性」をテーマに再考する。
Gallery 1に掲げられている『空間に永遠を刻む』は、厳格な幾何学的構成をもつ《白の家》(1966年)と、歪んだ正方形の広間に、地中に沈めた寝室を接続した《地の家》(1966年)という対照的な作品の発表時に、篠原が著した言葉だ。
上記2作品や、2022年にスイス・バーゼル近郊に移築再建された《から傘の家》(1961年)などの、篠原が「第1の様式」と呼ぶ初期作品は、原形をとどめながら新たな形で引き継がれつつある。
この展示室では、これら初期作品の空間概念の展開と、密接に関係する5つのプロジェクトのほか、新しい持ち主に引き継がれる前と後の写真も展示されているので、見比べながら、篠原が『空間に永遠を刻んだ』様子を観てほしい。
また、門外不出とも言える《白の家》の設計図も観ることができる。
内覧会でキュレーターの奥山氏が、「先生は私にこの図面を託す際、『ここにもう一つの篠原一男がいます。スタッフは私とだけではなく、この図面とも対決したのです』とおっしゃいました。これは今も篠原研究室でバイブルとなって引き継がれ、生き続けているのものです」と語った、貴重なものだ。
Gallery 2は、大学退官後のアトリエに併設された「ハウス イン ヨコハマ」と、未完の遺作となった「蓼科山地の初等幾何」という篠原の2つの自邸や、3冊の作品集、さらに最晩年のインタビュー動画などを通し、人間・篠原一男を振り返る。
この空間は、ハウス イン ヨコハマの2階のダイニング・書斎の1分の1のモックアップとなっている。出窓や個性的な形の扉が再現されており、オリジナルの家具も展示されている。
篠原は後半期に、大量のスケッチを遺しているが、ここではハウス イン ヨコハマに関するものが展示されている。
2フロアに渡るギャラリーをつなぐ中庭では、篠原の言葉や思想にフォーカスされた空間だ。
「篠原一男 100の問い」が壁面に書かれ、反対側の壁には、それぞれの言葉がどの時期のものなのか、作品の画像とともに年表形式で掲示されている。
また、100人・組の若い建築家、評論家、アーティストが篠原の問いに答えた、『「篠原一男 100の問い」への「100の応答」』が編集され、展覧会の来訪者に配布されるという。Webからダウンロードすることもできるので、来訪前に読んでおくこともおすすめだ。
【会期】4月17日(木)〜6月22日(日)
【休館日】月曜・祝日 ※5月3日(土)、4日(日)は開館、5月6日(火)は休館 ※TOTOギャラリー・間ウェブサイトにて最新情報をご確認ください
【時間】11:00〜18:00 ※入場無料
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。