「まだまだざわつく日本美術」

サントリー美術館

  • 2025/7/1(火)
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「まだまだざわつく日本美術」

 2021年に開催され、好評を博した展覧会の第二弾が開催中。
ある作品を見た時に感じる、言葉にならない「心のざわめき」を鑑賞の大切なきっかけととらえ、おもわず心がざわつくような展示方法や作品を通して「もっと作品を見たい!」という気持ちを高めてくれる。

 会場に入ると、壁や天井からの垂れ幕の一面に「ざわ ZAWA」の文字が書かれており、来場者を迎えるプロローグの作品は《袋法師絵巻》(江戸時代 17〜18世紀)。この作品では、登場人物の好色な法師が高貴な女性の館に侵入し、気づいたら法師は思わぬなところから顔をのぞかせている。「まあ、図々しい」と絵の中の法師に呆れつつも笑ってしまうような、最初の作品から心がざわざわさせられる仕掛けとなっている。

 本展は、「ぎゅうぎゅうする」、「おりおりする」、「らぶらぶする」、「ぱたぱたする」、「ちくちくする」、「しゅうしゅうする」の6章だてで、「もっと見たい、知りたい」と思わせる作品により、日本美術のエッセンスを気軽に味わうことができる。

 会場では「ぎゅうぎゅうする」で、窓枠から顔を出す絵の中の女性たちに混ざって写真が撮れるフォトスポットや、「しゅうしゅうする」で展示されている、とある皮膚科医が収集した髪飾りの展示コーナーで、櫛を実際に髪につけたような写真が撮れるよう、工夫が施されている。また、「らぶらぶする」のコーナーの照明や「ぱたぱたする」の展示風景など、カメラが大活躍すること間違いなしだ。(本展は展示室内撮影可能)

 また、「おりおりする」では、室内を区切るパーテーションとして使われた、実用品としての 屛風の姿を再現した、いつもと異なる展示方法が興味深い。
狩野探幽の《桐鳳凰図 屛風》(江戸時代 17世紀 通期展示)は、左右隻半分ずつ開いて繋げた形での展示となっており、展覧会の前期と後期で異なる姿を見ることができる。

 「ちくちくする」は、前回問い合わせが一番多かったという「津軽こぎん刺し」を一つの章に独立させて、じっくりと紹介。青森県津軽地方の中でも三つの地域ごとに異なる特徴や、津軽こぎん刺し特有の「モドコ」という基礎的な単位模様の解説がわかりやすく、「てこな(蝶)」「べこ(牛)刺し」など、主要なモドコの型を拡大模型で説明する展示は、実際に触ることもできる。

 展覧会のエピローグでは、「ざわつく、のその先へ−サントリーコレクションのはじまりと今」と題し、サントリー美術館が最初に入手した、豊臣秀吉の甥・秀次所用と伝わる《朱漆塗矢筈札紺糸素懸威具足》(桃山時代 16〜17世紀)と、現時点で最新の収蔵品、《山田氏宛書状(永楽十二代和全箱書)》(木米 江戸時代 19世紀)の二点が展示されている。
 丸に豊の文字が入った真っ赤な具足は、「これがあの秀次のものか」と何度もぐるぐる回りながら鑑賞しつつ、「ここからサントリー美術館の『しゅうしゅうする』が始まったのだな」と、心がざわざわした。

 子どもから大人まで、見て、読んで、触れて、撮ってと、いろいろな楽しみ方ができる展覧会で、あなたの中で起こる「ざわざわ」に注目してみてほしい。

【会期】7月2日(水)〜8月24日(日) ※会期中展示替えあり
【休館日】火曜(8月19日は18:00まで開館)
【時間】10:00〜18:00 (金、8月9日(土)、10日(日)、23日(土)は20:00まで) ※入館は閉館の30分前まで
【画像】「まだまだざわつく日本美術」展示風景 《袋法師絵巻》(部分) 一巻 江戸時代 17〜18世紀 通期展示 サントリー美術館蔵

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