ニッキー・マルーフ個展「ASPECTS OF DAILY LIFE」

ペロタン東京 (六本木6-6-9 ピラミデ1F)

  • 2025/9/10(水)
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ニッキー・マルーフ個展「ASPECTS OF DAILY LIFE」

 アメリカを拠点に活躍するアーティスト、ニッキー・マルーフの個展が開催中。

 室内や動物、食卓や花など身近なものをモチーフに描くマルーフの絵画は、心の中に隠された世界を描き、想像上の室内や動物たちは、人間の経験の代理物となっている。

 会場に入ると、明るい色彩の絵画が目に飛び込んできた。
大きな木を中心に鳥や動物を描かれた3点の絵画のうち《Spring》(2025年)では、桜の木の枝に卵を抱く鳥の巣とリスやカラフルな鳥などが生き生きと、生を謳歌するように描かれているが、よく見ると鳥をくわえた猫の存在が命の終わりや生命の循環を表しているように見える。
《Summer》(2025年)では、枝にチェリーの実がなり、鳥の巣には3羽のヒナがエサをねだるように口を開けている。あらゆることが結実したかのように見えるも、背景の黒い木と大地、そして黒い犬が鳥をくわえて木から立ち去るような姿を見ると、この作品からも不穏な空気が漂ってくる。三羽のヒナの親は無事だろうか、無事に育つのだろうか、など想像が止まらない。
《Autumn》(2025年)では、落ち葉や黒い鳥が終焉の訪れを示唆しているように見える。木の中央には、それまでの絵では描かれていない白いふくろうが鋭いツメで黒い鳥を捕らえており、これまた不穏な気配を感じる。夜の鳥であるふくろうは、北米地域では死の前触れや不吉な存在と見なされることもあるそうだ。空になった巣にいた三匹のヒナは無事に巣立ったのだろうか。

 マルーフの近作は、不安定に揺れ動く瞬間の静けさの中に不穏な違和感を漂わせている。本展ではタイトル「日常生活の側面」が表すとおり、寝室やダイニングなど生活空間での一場面を描きつつ、その中に潜む暗い影が見え隠れするのだ。

 会場でも目を引く《Pink Table》(2025年)では、画面全体にピンクのフィルターがかかっているような色合いの中に、ぐにゃりとねじれたフォークや質素ともいえる料理の残った皿、テーブルの上の手の動きや黒いマニキュアで塗られた指など、この後に起こる悲劇を予感させるような場面を俯瞰するような構図で、観る者の想像をかきたて、そこはかとない不安と緊張感を感じさせる。

 2号室に展示されている《In the Brambles》(2025年)では、夏の庭でベリーを摘む女性たちの足もとがいばらのトゲで傷ついている様子が描かれているが、これは絵画が「快楽の源」であると同時に、「時としてイバラのように痛みを伴う」ものであることのメタファーとなっている。

 ありふれた日常のありふれたものに命を吹き込み、特別なものへと変えるマルーフの絵画で、想像をかき立てられる鑑賞経験を楽しんでみてはいかがだろうか。

【会期】ニッキー・マルーフ「Aspects of Daily Life」9月10日(水)〜10月25日(土)
【休廊日】日・月曜日、祝日
【開廊時間】11:00〜19:00
【画像】「Aspects of Daily Life」の展示風景。ペロタン東京にて

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