福本美樹「海神」

禪フォトギャラリー(六本木6-6-9 ピラミデ2F)

  • 2025/9/12(金)
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福本美樹「海神」

 森山大道氏に師事し、フリーランスの写真家として活動する福本美樹の個展が開催中。

 2003年ごろからフランスで街角の風景などを撮影していた福本は、『日本を撮りたい』と思うようになり、自身にとっての日本らしさを模索するうちに、港の風景を撮るようになったという。

 日本独自の風景を求め、2010年ごろから10年以上の年月をかけて日本各地の漁港と海に生きる人々を撮影し、その集大成として写真集『海神』が完成。本展では、写真集より選りすぐりの作品を展示している。

 黒谷和紙に乳剤とガラスパウダーを塗布して印刷する独自の技法で制作された本展の作品は、粒子のキラキラ感が美しく、写真集と同じ作品でも違った表情をみせてくれる。この質感をいかすため、本展ではあえて作品の表面をガラスで保護していないそうだ。
福本の作品がもつ独自の色合いと写真の質感が、現実の風景を幻想的な世界にも見せ、写真でありながら絵画作品のようにも見える。

 富士山を背景に桜エビが干してある作品は、富士のふもとに咲く花のようにも見え、華やかで美しい。夜と朝が溶け合う時間の港の風景は神秘的で、港で働く人たちの姿は生命力にあふれている。
また、港に網が広げられている風景や夜の灯りに照らされた船など、ファンタジーの世界のような独自の色合いをぜひ会場で、写真集と見比べながら楽しんでほしい。

 会場でも印象的だったのは、正月飾りと大漁旗を掲げ、元旦の初日の出を背景に大海原を進む船の写真だ。海上での安全と船員の無事を願う祈りの風景は、新しい年への希望と神々しさに満ちあふれている。
だが、この作品を含む港の風景は、漁獲量や後継者の減少、漁師の高齢化とともに、もしかしたら消えゆくかもしれないという。

 福本が出会った日本独自の空気を感じる風景を観に、足を運んでみてはいかがだろうか。

【会期】9月12日(金)〜11月1日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜19:00

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