TOTOギャラリー・間(南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F)

「TOTOギャラリー・間(ま)」の開設40周年記念企画の第三弾として、バングラデシュのダッカを拠点に活動するマリーナ・タバサム・アーキテクツ(MTA)の展覧会が開催中。
過密する都市において、多様な人々が集う場所や、洪水で家を失った人々のための可動式住宅など、建築を通じて人々とともに生きるMTAの活動を、模型や映像、インスタレーションで紹介。本展を通し、今の世界的な状況の中で建築が今後どうあるべきか、どのような方向に向かうべきかを考える機会となる。
GALLERY 1(3階)は、バングラデシュの田園地帯の生活にフォーカスされており、2018年のベネチアビエンナーレでも展示された、農村部での中庭を再現したインスタレーションが展開されている。展示に使われている穀物を入れる壺やかまど等は、このインスタレーションのために村の人から寄贈されたものだそう。
本展の内覧会にて、MTA代表のマリーナ・タバサム氏は「本展では作品を見せるだけではなく、バングラデシュの生活も観て感じていただきたいと思い展示構成しました。自然と調和しながらその恵みを活用して生活している田園地帯に暮らす人々は、CO2の排出量はゼロであるにも関わらず、その排出による気候変動などの影響を最も受けている人々です」と語った。
バングラデュはヒマラヤ山脈から流れる川から形成される、ガンジスデルタによって構成され、700の川が流れる水の国ともいえる。気候変動による水害などの被害を受けた人々のために開発されたのが、現地語で『小さな家』を意味する「クディ・バリ / Khudi Bari」だ。
MTAが考案した可動式の住宅「クディ・バリ」は、地域の人々が自分たちの手で組み立て・解体を短時間で行うことができ、洪水発生時のシェルターとしても機能する。また、MTAが立ち上げた財団F.A.C.E(The Foundation for Architecture and Community Equity)は、バングラデシュ国内各地でクディ・バリを提供するだけでなく、ユニットを組み合わせロヒンギャの難民キャンプにおけるコミュニティセンターなど幅広い用途の建物に応用している。
GALLERY 1と4階のGALLERY 2をつなぐ中庭では、バングラデシュから輸送した「クディ・バリ」の実物を見ることができる。
また、京都の里山で実践を行う建築家の森田一弥氏と京都府立大学森田研究室協力のもと、日本の素材と技術で翻案した「日本版クディ・バリ」も並び、異なる文化が響き合う光景が広がっていた。
GALLERY 2は、都市部を中心としたプロジェクトを紹介する展示構成となっている。
亜熱帯に属するバングラデシュでは、通気性の良さが建築の最も重要な要素となる。MTAでは、なるべくエアコンに頼らず『呼吸する建物』を作ることを目的とし、ファサードに工夫を施している様子がわかる資料が展示されている。
また、2016年にアガ・カーン建築賞を受賞した「バイト・ウル・ロゥフ・モスク」の模型なども展示されている。地域の土を焼成したレンガと幾何学的な構成による祈りの空間は、静謐な光と風を取り込み、過密都市における寛容な場を創出していることが伝わってくる。
さらに、毎年一組が選ばれて造られる、サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン(イギリス・ロンドン)に、MTAが2025年に選出された作品《A Capsule in Time》や、独立記念博物館など、MTAが手がけた多様なプロジェクトが紹介され、建築が社会課題に応答する力を実感することができる。
【会期】2025年11月21日(木)〜2026年2月15日(日)
【休館日】月曜・祝日・年末年始休暇[2025年12月29日(月)〜2026年1月7日(水)] ※TOTOギャラリー・間ウェブサイトにて最新情報をご確認ください
【時間】11:00〜18:00 ※入場無料
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。