リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」

シュウゴアーツ(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2025/12/17(水)
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リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」

 台湾を拠点に活動するアーティスト、Lee Kit(リー・キット)の個展がシュウゴアーツにて開催中。

 今年はドイツ・カッセルのフリデリチアヌム美術館での個展や、大阪の国立国際美術館でのグループ展への出品など、精力的に活動を続けているリーは、本展のタイトルや、展覧会に寄せた言葉の一つひとつが詩的で美しく、豊かな感性と哲学的な思考、インスピレーションの源泉がうかがえる。

 会場に入って驚いたのは、壁の一部が天井から床までカーペットで覆われており、映像作品≪Next to the sky≫が映し出されている展示風景だ。
カーペットの色と質感のためか、映像がまるで絵画作品のようにも見えるが、リーの作品は映像やインスタレーションまで、絵画を空間的に拡張し続けていると聞くと納得だ。
 この作品と、奥の部屋で展開されている、透明なテープを張った壁に映し出される映像作品≪Dance≫とを見比べて、質感や表現の違いを楽しむとよいだろう。
また、本ギャラリーのホワイトキューブ空間に慣れているためか、カーペットの壁に展示された絵画作品も、新鮮な鑑賞体験として楽しめた。

 リーは近年、金属板に工業用スプレーで描く手法を展開しており、本展でも5点ほど観ることができる。
混色したスプレーを使わず、何層も重ねて独自の表現を生み出すのがリーの手法の特徴だが、本展でも色の下に金属のテクスチャーが感じられるものや、重なる色が織りなす層を楽しめるものなど、作品による表現の違いを味わうことができる。

 手前の部屋に飾られている≪Loud≫は、近づいて見るとパステルで「Loud」と書かれている。また、絵の下の方に「大声」という文字がふわっと浮かび上がり、絵の中には他の作品と異なる質感があるように感じられるが、これは映像で照らし出されているもので、絵具で描くように『絵画の層』を重ねている表現方法だ。絵の上で少しづつ文字やテクスチャーの濃さなどが変化していく様子は見飽きない。

 他にもスプレーの層の上に、パステルで文字やドローイングが描かれた作品が並ぶが、この手法はこれまでのリーの作品では見られなかったものだそう。
本展の絵画は今年の秋に1か月ほど、リーが日本に滞在した際に描かれたものだが、もしかしたら日本での滞在で新たなインスピレーションを得たのかも、と想像しながら観るのも面白い。

 また、リーが電子デバイスで描いたドローイングを出力した、エディション作品も展開されている。これも初の試みと聞くと、これからリーの絵画表現がどのように変化し拡張するのか、今後の展開が楽しみだ。

【会期】2025年12月13日(土)〜2026年1月31日(土)
【休廊日】日月祝(年末年始は、2025年12月28日〜2026年1月5日まで休廊)
【時間】11:00〜18:00
【画像】リー・キット「いくつかの壊れた日々とゆび」展示風景, シュウゴアーツ, 2025 Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts

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